その先鞭をつけたのが牛丼戦争だったことは記憶に新しい。それまで並が400円だったものが、牛丼御三家の激しいシェア争いから280円時代の攻防が続いた。低価格路線は結局、勝者なき不毛な戦いだったことに気づいて、安売り合戦は終止符を迎えるものの400円に戻ることはない。
サラリーマンのランチタイムの客単価はなかなか、上がることがない。それを阻止するかのように200円のシャケ弁当を高級住宅街といわれている東京・白金で販売したのがドンキホーテだ。

写真のシャケ弁は280円になっているが、これが結構評判になっている。
ランチ価格が上がらないもう一つの理由がお手製の「弁当」ブームだ。日本の弁当はクールということで海外でもブームになり「BENTO」が世界共通語になっている。
昔は愛妻弁当を持って来ることはカッコ悪かったが、弁当ブームで恥ずかしさがなくなった。
恥ずかしさがなくなったといえば、1円パチンコだ。
1パチが出始めた頃は1円を打つことに恥ずかしさを覚えた。4円が打てない貧乏人、と思われるのを嫌がった。
サラリーマンのランチ同様、デフレから脱却できないのがパチンコ業界ともいえる。脱却できないというよりデフレ=1円が完全に定着した業界ともいえる。
デフレから脱却しようと値上げに踏み込んだのがユニクロだったが、これが大失敗する。
その要因を経済評論家は次のように分析する。
「ユニクロのサイズはXLまでしかない。つまり肥満体ではユニクロの商品は買えない。しまむらは5Lまで揃えているので同じ安売りでも増収増益を続けている。日銀は物価上昇率を2%に設定したが、サラリーマンの給料は上がっていないので、値上げは失敗する」
この経済評論家は、業界の取材も試みた結果、パチンコがデフレから脱却できるかどうかを射幸性が握っていると指摘する。
「ギャンブルは射幸性がなければおカネは払わない。ところが業界は射幸性を落とす方向へ向かっている。これでは4円客は増えるわけがない。射幸性以外でよほど面白いパチンコ台を出さない限り、1円客が4円に戻ることはない」
遊技機メーカーの取材ではこんな答えを引きだしている。
「今は儲かっていない。1機種で沢山売れた時代は儲かったが、今はそういう機械はない。射幸性を煽る機械が出せないから、その分、機種を沢山出している。機械代が高いという批判は承知しているが、安い機械を出すと相当見劣りする」
大手ホールの営業本部長からはこんな本音を引きだしている。
「本来1円は参入したくなかった。しかし、業界の流れがどんどん1円に流れ、1円をやらざるを得ないことになった。意地でも1円はしたくなかったが、それができなかったことが痛恨の極みだった。1円をやると4円に戻れくなることは分かっていた。1円をやるからには戦略が必要だったが、戦略もなかった」
高級ブランドが価格競争をしないのはそこにある。一度値下げしたものは二度と値上げすることはできない。
経済評論家の結論はこうだ。
「これだけ1円市場が出来上がっている以上、4円の復活は100%無理。小泉政権下で非正規雇用を解禁した。これでは正規雇用も増えない。カリフォルニア州のように同一労働同一賃金を導入しなければ無理。本部長が『今を生きるだけ。先を見ても仕方ない。10年後のことは分からないし、想像もできない』といった時にこの業界は終わった、と思いました」
業界として、10年後のグランドデザインを考える時期にも差しかかっている。メーカーの不正機撤去でもたついているようではそんな思考にも至らない。メーカーとホールでは利害関係はあるが、一緒になって業界の未来を考える時だ。

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