ところが、パチンコメーカーの中にはそんな考えを改めるところも出始めてきた。メーカー、販社からすれば、新台を買ってもらえなくても弱小ホールが生き残れないようでは、将来の市場規模がますます縮小することは避けられないからだ。
「スロットメーカーは1台からでも導入できるメーカーもあります。パチンコも台数縛りを撤廃しなければメーカーも生き残れない」(大手メーカー関係者)
パチンコメーカーでも下位メーカーともなると、台数縛りを設けるところもないが、大手になると上場している関係で、どうしても利益優先になる。手っ取り早く売り上げを作るためには、台数縛りが一番簡単な方法であった。
そんなビジネスモデルも崩壊しつつある。
今から4年ほど前、こんなことがあった。鉄板といわれたビッグタイトルのエヴァンゲリオンとギンパラが相次いで大コケしたことがあった。地下ホール280台を全台エヴァで埋めたぐらい期待が高かったが、ものの見事に裏切られた。それまでにも、ビッグタイトルがコケまくっていたが、転売なども含め、ホール側にはまだ多少の余裕があったが、それも今は昔。
機械代を3割削減する大手もあり、機械選びがシビアになった。その結果、必要な機種を必要な台数しか買わなくなった。付き合いで不要なものは買わなくなった。
新台の購入台数が減れば、中古市場に流れる機械も減る、ということだ。1パチは中古機、というモデルが成り立たなくなる。大手は1番店に新台を入れ、それを2番店、3番店、と使いまわして行く。そうなると弱小ホールは、中古機ですら入れ替えができなくなる。
弱小ホールが生き残れることを考えなければいけないが、かといって販売台数は確実に減っていくので、メーカーが機械代を値上げすることはあっても、機械代の値下げに踏み切ることはまず、考えられない。
メーカーの営業会議で「弱小ホールが生き残れるようにしましょう」という正論は、少数派の意見であり、そんな声を上げようものなら、たちどころに出世に響いてしまう。しかし、そんなことを言ってはいられない状況に来ている。
メーカーはいい機械さえ出れば、下位メーカーでも一発逆転が打てるが、ホールにはそんな飛び道具はない。地道にコツコツ集客するしかない。
セブンイレブンが昨年1月から導入を開始した挽き立てドリップコーヒーが、1杯100円という低価格が受けて、ことし3月で累計4億5000万杯もの売り上げを達成した。1店舗平均1日100杯も売り上げる、超ベストセラー商品となった。
売上高はコーヒーだけで450億円だ。
売り上げから原価を引いていかなければ、粗利は出ない。豆の仕入れが8掛けとすれば、90億円、7掛けなら135億円、6掛けなら180億円、5掛けなら225億円の利益となる。
グループ会社のイトーヨーカ堂の2014年度の売上高は1兆3243億円、営業利益168億円の見通しだ。
目標とする営業利益168億円は、コーヒー豆が6掛けの場合でもイトーヨーカ堂全体の利益にを上回る。
食料品は別として、衣料品や雑貨が足を引っ張るビジネスモデルと成り下がっているのが総合スーパーの実態である。
これをパチンコ業界に置き換えると、4パチが総合スーパーで、1パチがセブンのコーヒーだ。1杯100円のコーヒーでも数を売れば、総合スーパーを凌駕するぐらいの利益を出せる。
この考え方をホールがどう取り入れるかで今後の生き残りにかかっている、ともいえる。

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