年齢は30代後半。弁護士生活を6年間ほどやった後、ホール企業へアルバイトで就職していた。もちろん、履歴書には弁護士であることを隠していた。
職場で出会った女性と結婚することになり、上司から勧めで正社員になることになり弁護士だったことを明かした。
日本の国家試験の中でも最難関といわれる司法試験を合格しながら、就職先がなくて弁護士登録もしないままの弁護士が少なくない、という。
弁護士活動を行うためには日弁連と所属する弁護士会に所属して、月会費を払わなければならないからだ。
弁護士の就職先がないのは、法科大学院制度で弁護士が一気に倍近く増えたことが原因だ。
弁護士が増えても仕事がなければ、弁護士事務所もいそ弁を雇うことはできない。
いそ弁とは居候弁護士のことで、弁護士事務所から給料は出る。そこで修業しながら3年ぐらいで独立するのがこれまでの流れだが、今は5年経っても独立しない弁護士も少なくない、という。
いそ弁に対して、最近生まれたのがのき弁。事務所の一角を間借りするだけで給料は出ない。
政府の肝いりで弁護士の数を増やしたのだから、政府にも責任がある。
そこで政府は企業に働きかけ、企業の法務部に弁護士を採用するように働きかけているが、企業はなかなか首を縦にはふらない。
新米弁護士といえども国家資格を持っているので、一般の社員よりも高い給料で採用しなければいけない。
例えば、大学の新卒に年収600万出す企業はないが、新人といえども弁護士ならそれぐらい出さないといけない。
新米の弁護士にそんな高給を出すより、弁護士事務所と顧問契約を結んで、仕事があるときだけ頼んだ方が、企業としてもその方がはるかにコストパフォーマンスが高い。
弁護士6年目の平均年収は1073万円だが、年収400万円以下の人が12%もいる。超難関試験を突破しながら、年収が低ければ弁護士のなり手も少なくなってくる。
法曹界としても由々しき問題だ。
日弁連も現在の3000人体制から半分の1500人ぐらいにするように答申しているそうだ。
Aさんの仕事は市役所などで開かれている法律無料相談やサラ金の過払い請求が主な仕事だった。
弁護士歴6年といえば、そろそろ独立する時期だが営業が苦手だった。このまま弁護士を続けることに不安を覚え、ホールでアルバイトするようになった。
「過払い請求は弁護士資格が必要ですが、あれは弁護士がやる仕事ではありません。ホールで働いてみて本当に良かった思っています。何より、皆がよくしてくれる。サービス残業もなく、皆が生き生き働いている。弁護士のときよりも精神的にも楽になりました。弁護士の世界に未練はありません」
ホール企業でも大手ともなると法務部がある。
苦労して取った国家資格は、そういうところで活かすのも一つの手だ。

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