ポートの数と密度が利用者の利便性を左右する以上、比較的敷地に余裕のあるホールに白羽の矢が立つのは自然な流れだ。営業マンの目の付け所自体は、決して悪くない。
背景には、京都特有の社会問題がある。
オーバーツーリズムにより、路線バスは外国人観光客で溢れ、市民が満足に利用できない状況が常態化している。
そこで注目されているのが、徒歩や自転車では回りきれない範囲をカバーできる電動キックボードだ。宿泊施設から観光地への移動、清水寺のような定番スポットから少し離れた穴場まで、効率よく回りたいというニーズに合致している。
実際、利用者の約8割が「駅から800メートル未満」の移動での使用を希望しており、電動キックボードはバスや鉄道を補完する“ラストワンマイル”の移動手段として定着しつつある。
しかし、2026年現在、その普及を阻んでいる最大の壁は、依然としてポート不足だ。
京都市内中心部は空きスペースが少なく、コンビニやマンションの軒先など、わずかなスペースを巡る争奪戦が起きている。そんな中で、広い駐車場を持つホールに目を付けたのは、営業戦略としては理解できる。
営業マンのセールストークはこうだ。
「ポートを設置すれば、アプリ上でホールが表示され、ランドマークになります。来店動機にもつながります」
しかし、この言葉は店長の心には響かなかった。
そもそも電動キックボードの主な利用者は観光客である。飲食店であれば「ついでに入ってみよう」という導線も考えられるが、パチンコホールは違う。観光の合間に、ふらっと立ち寄るには心理的ハードルが高すぎる。
さらに言えば、提示されたポート設置の月額地代は雀の涙ほど。
敷地を提供し、管理リスクも負い、それで得られるメリットがほとんどない以上、経営判断としては成立しない。
結果、店長の答えはシンプルだった。
「なるほど話は分かる。でも、うちには合わない」
電動キックボードは、確かに都市の課題を解決する可能性を秘めている。
しかし、それがそのままホールの価値向上につながるかと言えば、話は別だ。
ホールは社会実験の受け皿ではない。そう割り切った判断だった。
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