カウンター担当のA子さん。彼女はホールの看板娘、マドンナ的な存在。
そのホールは都市型の中規模店舗。パチンコは1パチ専門でスロットは5スと20スロがある。
客層は20代から30代の若年層の男性、学生風からサラリーマンまでいろいろ。
店舗はホールとカウンターが区切られ別空間の構造で、出入口は自動ドアになっている。
A子さんは21歳。主にカウンターを担当し、時にはホールにも出る。
色白でちょっとハーフっぽいキュートな女の子。愛想がよく、スタッフからも好感をもたれ、お客さま受けする笑顔は絶品。
相方が休憩に入ったこともあり、1人でカウンター業務をやっていたA子さん。その日、彼女を悩ます事件が起きた。
30歳前後の男性がデジカメを持ってカウンター前にやって来た。
A子さんはいつものように笑顔でその男性に一礼をした。
すると、突然、「写真、撮らせて!」の一言。
A子さんは予期せぬ言葉に戸惑い、驚きの表情を浮かべ、「すみません。それ、困ります」とその男性に丁寧に応えた。
すると、男性は手にしたデジカメをA子さんに向けシャッターを一押し、逃げだすように足早にその場から駆け去った。
突然の刹那的な出来事にA子さんもただただ戸惑うだけ。しかも、その男性は顔に見覚えのある自店の常連さん。
その後、冷静さを取り戻したA子さん。しかし、何とも複雑な気持ちに包まれてしまった。
写真の1枚、大袈裟に騒ぎたてず、自分の胸のうちにしまってしまえば済むこと。
しかし、これを黙認してしまうと今後その男性からストーカー的な行為を受ける可能性もある。
ただ、結構よく見かける常連さまだけに、事を荒立ててお客さまが来店し辛くなるもの困る。
この厳しいご時世、常連のお客さまでもあるし、お店の立場に立てば失いたくない。
その日、悶々とした気持ちで時間を過ごし、タイムカードを押して家路についた。
自分なりに気持ちの整理をしようと眠りにつくまで考えてみた。そして、やはり「明日、店長に報告しよう」と決めた。
何より、その男性の行為がエスカレートして行くことが怖かったし、職場での出来事は職場で決着を、と思った。
翌日、店長に報告。店長はすぐに主任に相談した。早速、主任を中心にその犯人捜しが始まった。
そして程なく、男性客はいつものように来店して来た。そこで主任がその男性客に事実確認を行った。
最初こそ険悪なムードも漂ったらしいが、結局、男性は自分の行為を認め、主任に謝り二度とそんなことはしないと約束した。
その態度をみて、主任の判断で「出入り禁止」を言い渡すことは無かった。
只、その男性があらめてA子さんに対し正式な陳謝をしたかどうか、その点は私は知らない。
一人のお客さまも失いたくないホール現場。しかし、なかには常識を逸脱した行為に走るお客さまもいる。
一方、従業員の身の安全、安心して働ける環境、その為のさまざまな対応や措置は幹部の重要な業務の一つ。
それにしても、その男性客がカウンターを訪れた際、A子さんはどう対応するのだろうか?
やはり動揺は隠せないだろうし、そう簡単には悪夢の記憶は取り除かれないだろう。
お店の判断基準を知る由もないが、やはりA子さんの本音は「出入り禁止」だったのではないだろうか?
しかし、現実はお店の事情が優先、業界の現況、客さまの激減は「罪を憎んで人を憎まず」を良しとするのだろう。

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