子供は別として大人なら、はなっから当たりくじなんか存在しない、と考えるの普通だ。
ハズレくじばかりだとしても、残念賞はもらえる。ま、子供のお楽しみという程度で、目くじらを立てるほどのことではなかったが、テキヤの当てものの存続を揺るがすような事件が大阪で起こった。
神社の縁日に出ていたテキヤの当てもので、1等のゲーム機欲しさに、気がつけば1万円も突っ込んだ人がいた。
1回300円だから、33回ほど引いたことになる。
それで、この人が当たりくじがないのではないか、と警察に訴えたことから、テキヤの当てものに警察がメスが入ることになった。
で、警察官がこのテキヤの屋台に張り込んで、100人近くの客が1回も当たりくじを引けなかったことを確認して、踏み込んだ。
その結果、当たりくじが存在しないことが分かった。
テキヤの男はすんなりと当たりくじが存在しないことを認め「1日10万円ほど稼いでいた」と供述した。
当たりくじのないテキヤの当てものなんて、今回のケースが特別なケースではないだけに、当てものそのものの存続に関わる問題ではないかも知れないが、これがパチンコとなると事情は大きく変わる。
まだ、一発機が全盛のころに話は遡る。
一人の客が1台に16万円つぎ込んで「一発も命に入らなかった」と騒ぎ始めた。一発も命に入らないのは、完全に命を殺している可能性が大だ。
客は店長に「命を殺しているはずだ。おカネを返せ」と文句をいったが、「そんなことはない」と取り合おうとはしなかった。
腹の虫が収まらない客は、閉店後に公衆電話から110番した。
まもなく現場にパトカーが到着した。
客は警察官に状況を説明した。
警察官がさっそくゲージ棒を宛て、玉が通るかどうかを確認したところ、客の言い分が正しいことが分かった。
ガチガチに閉まっていた。いくらおカネを突っ込もうがこれでは勝てるはずがない。
警察官はほかの一発台も調べたが、命がガチガチに閉まっている台が何台もあった。
客は改めて「投資した15万円を全額返金しろ」と迫った。
差玉を確認したところ、15万円というのははったりで、実際使ったのは12万5000円ほどだった。
客はなおも要求を出してきた。
「きょうは1日棒に振ってしまった」と迫った。
横に警察官がいるのであからさまに日当の金額まではいわなかったが、後から2万5000円を要求してきた。
男は地元暴力団の準構成員だった。
翌日、男はホールに示談交渉にやって来た。
一発機につぎ込んだ12万5000円に日当の2万5000円を加え、さらに警察へは被害届を出さない、という念書を書いて、さらに示談金をせしめることに成功した。
一発機の釘がガチガチに閉まっている、という噂は瞬く間に広まり、客足は一気に遠のいた。
こうした一発機の極端な釘曲げが契機となって、釘調整は未承認変更だとうるさく取り締まるようになった。
このホールは、時代に助けられたのか、この件で行政処分を受けることはなかったが、この一件で客足が戻らずに閉店に追い込まれた。
当然の結果だ。
警察の行政処分より、客の目は厳しい。

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