その日、夕方に来店した一人の客は、立体駐車場の最上階に車を停めた。その隣には、エンジンをかけたままの白いワンボックスカーがあったが、特に気に留めることもなくホールへと向かった。
3時間後、遊技を終えて駐車場に戻ると、そのワンボックスカーはまだ同じ位置で、しかもエンジンがかかったままだった。さらに車内はカーテンで目隠しされ、中の様子はまったく見えない。違和感が胸をよぎった。
客はホールへ戻り、店長に「不審な車がある」と伝えた。店長とスタッフはすぐさま立体駐車場へ向かい、現場を確認した。
近づくと、車体が小刻みに揺れているのがはっきりと分かった。店長はドアを軽くノックし、「大丈夫ですか?」と声をかけたが応答はない。
明らかに中に人がいる気配がある。そこで「敷地内の管理上、ドアを開けてもらえますか?」と再度要請。しかし、中から返ってきたのは沈黙と拒絶の空気だけだった。
マニュアルに従い、店長は迷わず110番通報。ほどなく警察が駆けつけた。事情を説明すると、警官は「お客でなければ不法侵入にあたる」との見解を示す。やがて車内からは「ホールで遊んでいた」との声が返った。だが、店長が「監視カメラで確認します」と告げると、中の人間は観念した。
警察官がドアを開けると、中には男女数人。しかも本格的な撮影機材が並んでいた。事情を聴くと、彼らは車内でアダルトビデオの撮影をしていたのである。
最初は「私的な趣味の撮影」と言い張ったが、問い詰められるうちに、商業目的の仕事であったことを認めた。
今回の件は、日中の「幼児置き去り防止」巡回が功を奏する時間帯では起きなかった。むしろ、巡回が途切れる夜間に、別のリスクが潜んでいることを浮き彫りにした。
パチンコホールは今や防犯カメラの数も多く、場内管理は厳重だが、敷地全体の安全管理は駐車場を含めてこそ完結する。長時間エンジンをかけたままの車、目隠しされた窓、そして理由のはっきりしない滞在——こうした兆候を見逃さないことが、事故やトラブルを防ぐ第一歩である。
ホールの駐車場は事件・事故・犯罪の現場にもなり得る。今回は幸い、迅速な通報と警察対応で大事には至らなかったが、もしこれが別のケース——幼児放置や薬物事件——だったら、対応の遅れは致命的だっただろう。
「揺れる車」の異変に気づき、店長が即座にマニュアル通り通報した判断は正しかった。だが同時に、この一件は「夜間の駐車場巡回強化」という課題を突きつけた。
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