しかし、この“660万人”という数字は、本当に正しいのか。ダイコク電機は7月14日の「DK-SIS白書2025年版」発表会で真っ向から疑問を突きつけた。全国のSIS加盟ホール(台数シェア42.1%)から吸い上げたアウト、来店ID、会員サービスのログという、生の行動データを基に試算すると、実際の遊技人口は少なく見積もっても1300万人、上限で1660万人になるという。
象徴的なのが2024年7月7日のデータだ。平日にもかかわらず推計270万人が来店。もし本当に660万人しかいないなら、その日は業界人口の4割がホールに集まったことになる。常識的に考えてあり得ない数字だ。実際には全体の16〜17%が遊技したと推定され、逆算すると“二倍以上”の参加人口が導かれる。
さらに決定的なのは粗利の動きだ。レジャー白書では遊技人口が14%減ったとされる2022〜23年に、ダイコク電機のデータでは総粗利は横ばいどころか微増している。もし本当に客数がそこまで減っていれば、粗利も当然落ち込むはずだ。現場データと統計推計の乖離は明らかだ。
問題は、この「小さい数字」が一人歩きしていることだ。ホール経営者もメーカーも、660万人を前提に将来像を語り、「だから市場は縮小している」「だから投資は抑える」と自ら縮小均衡に踏み込んでいく。
こうして数字は予言ではなく自己成就する現象になる。
レジャー白書の調査方法は、15歳から79歳までの男女約3,000人を対象にアンケート調査を行い、その結果から国内人口の動向を推定する統計推計だ。
学術的には整っているが、母集団が小さく、実際の行動と乖離しやすい。ましてやパチンコのように参加層が偏り、かつ日常的な頻度が人によって大きく異なる遊びを、一般アンケートだけで測るのは難しい。
一方、ダイコク電機のデータは会員や常連客寄りとはいえ、少なくとも実際に玉やメダルを貸し出した記録に基づく。どちらが現場の肌感覚に近いかは明白だ。
業界の最大の病理は、この数字検証を自ら放棄してきたことにある。外部が作った統計を「公式っぽいから」とうのみにし、内部データを総合分析して反証する努力を怠った。その結果、「市場は半分になった」というイメージだけが先行し、自治体や金融機関にまでネガティブな認識を広めてしまった。
もし本当に1300万人規模の市場が残っているのなら、戦略はまったく違ってくる。今のようにコスト削減一辺倒で店舗をすり減らすのではなく、稼働の高い地域・日付・機種構成を精緻に読み取り、投資の再配分をすべきだ。縮小の幻想に乗っかって自ら息を止めるのは愚策だ。
数字は事実を映す鏡にも、間違った物語を作る魔法の道具にもなる。業界が生き残るには、外部統計をうのみにせず、現場発のデータで自ら市場を描き直す覚悟が必要だ。そうしなければ、「660万人」という数字は、この産業の墓碑銘として歴史に刻まれるだろう。
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