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1万軒割れに鈍感だった業界が縮小の自覚なきまま過ぎた転換点

全国のホール軒数は警察庁発表と全日遊連加盟発表の2つがある。警察庁発表は非組も含まれるため、全日遊連よりも多いことを念頭に話を進める。

全日遊連の統計によれば、全国のパチンコホール数が1万軒を割ったのは、2018年。2017年末時点で全国に10,011軒あったホールは、翌年末には9,681軒にまで減少し、ついに長年守られてきた「1万軒」のラインを下回った。

それは、業界にとって象徴的かつ歴史的な出来事だったはずだ。にもかかわらず、その節目を「通過点」としか見なさなかった業界の鈍感さが、現在の危機的状況を招いた一因であることは間違いない。

この「1万軒割れ」は、単なる数の話ではなかった。

1万という数字は、全国47都道府県、各地域でそれなりの存在感を持ち、娯楽の一つとして機能していた証でもあった。言い換えれば、それは「地域インフラとしてのパチンコホールの限界点」であり、それを割り込んだ瞬間から、業界は全国娯楽産業から“選ばれし都市型施設”へと、無意識のうちに変質し始めていたのである。

ところが当時、その重大性を認識し、声を上げた業界人はごくわずかだった。

業界誌も、「ついに1万軒を割った」という事実を淡々と伝えるだけで、そこに危機感を持たせるような論調はほとんど見られなかった。組合もまた、目の前の旧規則機撤去対応や内規調整に追われ、「このままでは業界そのものが沈む」という大局的視点は後回しにされていた。

一方、大手ホール企業は違った。

マルハン、ダイナム、キコーナ、 D’STATIONといった全国展開型のグループは、この1万軒割れをむしろ“好機”と捉えた。市場の縮小が加速する中で、設備投資力や機械購入力に優れた大手が、地場ホールの撤退後を着実に拾い、新店や大型化、M&Aを進めていった。

すでに「体力勝負」の様相を呈していた市場で、大手は1万軒割れを「寡占の序章」と見抜き、動いた。一方、中小ホールは、その数字を遠い話のように捉え、傍観した。

もっと問題だったのは、行政や監督官庁の無関心である。

1万軒を切るというのは、いわば「一業界の全国構造が瓦解し始めた」ということだ。普通の産業であれば、業界団体と行政が連携し、緊急的な中小支援策や構造改革案を協議するような事態である。

しかしパチンコ業界は、規制産業であるがゆえに、支援対象とは見なされない。むしろ取り締まり対象が減ることは警察行政としては好ましかった。

そして忘れてはならないのが、1万軒割れ以降の「集客構造の変化」である。

店舗数の減少は、単に数が減ったという話に留まらない。特定エリアにおいて選択肢が狭まり、客の流動性が失われる。生活圏からホールが消えることで、「久しぶりに行ってみようか」と思い立つきっかけも失われる。

1万軒という水準は、そうした「日常へのパチンコの介在」が成り立つ最小限の社会的存在感だったと考えるべきだ。

この縮小が加速する中で、業界内の言説も変化した。

「これからは質の時代」「店舗数が減っても、1店舗あたりの利益率を上げればいい」といった論調が主流になっていった。しかしそれは、希望的観測に過ぎなかった。機械性能に制限がある中で、収益性の確保には限界があり、稼働が減れば、どれだけ質を高めても数字はついてこない。

結局、1万軒割れに際して「このままではダメだ」と構造転換に舵を切った者が少なかったことが、業界全体の地盤沈下を早めたのだ。

現在、全日遊連加盟ホール数は6月で5855軒と6000軒を割ってしまった。

あのとき、もっと本気で「縮小の時代にふさわしい業界の形」を議論していれば、こんな急激な衰退にはならなかったかもしれない。

1万軒割れは、単なる数字の問題ではなかった。それは、業界が自らの終わり方に向き合うべきタイミングだったのである。

その現実から目を背けたツケは、これから本格的にやってくる。

「今さら何をやっても手遅れだ」とホール関係者の声が虚しく響く。



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