ドア越しに「大丈夫ですか?」と声を掛けた。
中から「酷い下痢で大変なんです」と返事があった。
「薬を用意しますが、正露丸でいいですか?」
「はい、お願いします」
通常の2~3倍を飲んだ模様だ。たくさん飲んだからと言って効くものでもない。
「車で来ているけど家まで帰れない」
「じゃ、救急車を呼びましょうか?」
「そういう問題じゃない。救急車の中で漏らしてしまう」
客が個室に籠って1時間半近くが経ったところで、ようやく下痢が収まり出てきた。
顔中汗びっしょりだった。
客はプレイ中だった。玉は残っていたが片付けられていた。
放送しても一向に戻ってこなかったためだ。
玉は流していたが、それを会員カードに入れてもらった。しかし、打っていた台は確変中だったが、電源を切られていた。それに文句を言うこともなく、下痢が収まった方が嬉しかった。
店長は今回の件で、もしこれが女性客だった場合を考えてみた。
このホールは女性スタッフの数が少なく、シフトによっては男性スタッフのみで回している時間帯もあったからだ。今回の件では従業員1人が様子を窺うためにずっと付きっきりになっていた。
緊急事態とは言え男性スタッフが女性トイレに入って行くのは憚れる。トイレに入って指示を出すのはやはり役職者がやらなければならない。この辺をどうするか。
ホールには常備薬は置いているが、クスリは客の判断で飲んでもらうことになる。飲ませたクスリで問題が起きた時は…
中小ホールだとその辺のマニュアルもないので、店長はマニュアルを作ることを考えた。
ホールは高齢者が多いため、遊技中に気分が悪くなって倒れ、救急車を呼ぶケースはよくあることだ。
AEDを設置しているホールは、従業員は救命救急講習を受けているので、それで一命をとりとめたケースもある。
けが人や急病人が発生した場合は、その場に居合わせた人が適切な対応を取らなければならない。
応急手当の目的は、「救命」「悪化防止」「苦痛の軽減」の3つだ。呼びかけに反応がない、呼吸停止、心臓停止、気道異物などの症状を認めた場合には、「救命」を目的とした手当が必要となる。
すぐに生命にかかわることはなさそうな状態に見えても、けがや病気(例:出血・ショック・頭痛・胸痛・腹痛・けいれんや傷・骨折・熱傷など)そのものが重症であったり、対処の仕方によっては症状が悪化し、ついには生命にかかわることもある。このような傷病者には「悪化防止」「苦痛の軽減」を目的とした手当が必要となる。
下痢客の話から応急手当の話まで広がったが、高齢者が多いホールではそういう危険性とは常に隣り合わせである。

※コメントには必ずハンドルネームを入れてください。匿名は承認しません。コメントがエントリーになる場合もあります。