出店意欲のあるホール企業の中には、今後の生き残りをかけて拡大路線をひた走る。その理由をこう明かす。
「グループで最低1万台あれば、新基準機で売り上げが20%ダウンして、ピーク時の稼働が35%でもやって行ける、というシミュレーションがあるからです。これからの時代を生き残るには数の力が必要になってきます」(中堅ホール幹部)
このホールは複数のM&Aを行った結果、1万台を達成したが、M&Aの実態とは銀行のリスクヘッジにも見えてくる。
バブル時代、銀行は土地や株を担保にして、企業に大量の資金を貸付けた。ところが、バブルが崩壊して企業の経営が悪化し、銀行にお金を返せなくなったため、銀行は担保を差し押さえようとした。しかし、バブル時代に担保とした土地や株は、バブル崩壊とともに下落してしまったため、いくら担保を差し押さえても貸したお金は取り戻せなくなった。
こうして、銀行は巨額の不良債権を抱え、経営を悪化させてしまった。不良債権問題は、日本経済を脅かす大問題に発展した。
バブル崩壊後は失われた20年などと言われ、景気低迷が続き、新たな不良債権がどんどん発生していく。銀行も不良債権の処理を行ってはいるが、不良債権額は増加する一方だ。
不良債権を抱えて経営破たんしないために、貸倒引当金がある。これは、取引先の倒産などによって売掛金や貸付金などの金銭債権が回収できない時のために、その取立不能見込額をあらかじめ見積もり、計上しておく引当金のことを意味する。
銀行にとって貸倒引当金を積むことは、銀行の利益が減少してしまうことを意味する。加えて、資本(資産と負債の差額)が減少してしまい、銀行の事業基盤である資本(純資産)が大きく毀損してしまう。
経営破たんした金融機関は自己資本率の低下、という特徴がみられたため国際業務を行う銀行の自己資本比率は、国際統一する基準としてBIS規制が導入され、最低基準が8%以上に定められた。
金融機関が恐れるのは金融庁検査で、大手銀行は毎年、無理な貸し出しで不良債権が増えていないか、不正な取引で違法がないか、などを調べる。問題があれば、業務改善命令や業務停止命令を出す。
金融庁検査で銀行としては貸倒引当金を少なくしたい。特に先行きが不透明なパチンコ業界となるとなおさらだ。多少の融資も行うので債権を引き取って欲しい。優良ホール企業なら貸倒引当金を積むリスクも少なくなる。
今後も銀行主導のM&Aは加速していきそうだ。

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