客が警察を呼んだ理由が、誠に些細なことだった。客からすれば些細なことでは済まされないのかも知れないが。
玉掛かりして、ブドウ状態になった。店員を呼んでトラブル処理したが、サービス玉もなくジャラジャラ玉を落とされたことに腹が立った、ということだ。
店員に文句を言ったが、その時間帯に店の責任者である店長が不在だった。押し問答で埒が明かないので客がヒートアップして110番した、ということだ。
警察官が来たということで、従業員がすぐに店長に連絡を取り、店に戻ってきた。4人も警察が来ている光景に店長はパニックになった。
事情を聴いた警察官としては民事不介入の立場である。
ここは何とか場を納めないと社長からお咎めを食らうことだけが、店長の頭に浮かんだ。
警察官の前で補填するとも言えない。ますます頭は真っ白になって行った。
とりあえず、従業員に事情説明を受けた。
「バラバラ落ちたのはこっちの落ち度ですが、たまたま1個入ったのでそれでいいと思いました」
客は「玉掛かりしていた量は500円分ぐらいあった。500円返せ」と主張した。
店長は500円返したら警察から何て言われるかも分からない。風営法の中で営業しているので、対処方法が分からない、というのが店長の本音だった。
その場は「弁護士と相談してから対処する」という結論を出した。
店長はこのことを社長に報告した。すると、こう一喝された。
「店長になってそんな判断もできないのか! 何が店長だ!」
あまりにも冷たい言葉が辛くて、悔しかった。
弁護士と相談した。
実際にどれぐらいブドウ状態で玉がひっかかるかを検証して、玉数を調べてみた。すると客の言い分である500円には相当せず、せいぜい50個だった。
よって補償は50個までとすることになった。
社長が立腹したのは玉掛かりする台を店長が作ってしまったことだ。これに対しても店長は厳しく詰問された。最後は始末書を書かされた。
店長は開き直り気味に社長にどうすれば良かったかを聞いてみた。
「そんなことをいちいち俺に聞くな!」
一番対処方法を知らないのが社長だった。
店長はこれを機会に客とのトラブルの想定問答ノートを作り始めた。そして、全国のホールではトラブルマニュアルをどの程度作っているのかを知りたくなった。

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