元日営業の日、派遣会社のコーヒーレディーが常連の年配客から「お年玉をあげる」といわれた。
彼女はこのホールに派遣されて1年。笑顔が爽やかでたちまち人気者になり、土日は1人で100杯以上のコーヒーを売る実力の持ち主。ホールのアイドル的存在であり、年配客が多いこのホールでは、孫娘のような存在でもあった。
彼女は、最初は「いいです」と何度も断ったが、最後はポケットにねじ込まれた、という次第だ。
その時、店長は不在で彼女は副店長にすぐに事の次第を報告した。ポチ袋の中を見ると1000円札が5枚入っていた。
報告を聞いた副店長は、そのお年玉を返すべく常連客のところに向かった。
「これは受け取れません」
「いいじゃないか、正月なんだからお年玉だ。彼女のファン一同からのお年玉だ」
5000円は1人ではなく、複数から集めたものであることがこの時初めて分かった。常連客も一度渡したものを受け取るわけにはいかない。
そうこうしているうちに、常連客は帰ってしまった。
この一件を店長に報告した。
ホールスタッフには金品をもらってはいけない、と教育していたが、店長としてもコーヒーレディーにお年玉は初めてのケースだった。外部のスタッフとはいえ金品を受け取ることは認められない。
「返さなければいけない」と結論は出ているのだが、店長としては常連客の顔を潰さないように返すにはどうしたらいいかが分からなかった。
パチンコ以外の商売、例えば飲み屋などでは常連客がスタッフにお年玉を渡すことは珍しいことではないが、このコーヒーレディーの場合は、お年玉を貰った常連客にコーヒーを無料サービスしているのではないか、と他の客から疑いの目を向けられる可能性もある。
そういう意味を踏まえて、懇切丁寧に説明して、一度渡したものを受け取ってもらわなければいけないが、店長はここで苦悩する。
「固辞しても突っ込まれたのなら、うちの場合は受け取ります。ここは常連さんの気持ちを大切にしたい。そして、役職者が常連さんのところにお礼に行きます。常連さんの顔を潰すリスクの方が大きい。そして、もらったことは社内でオープンにして共有しておきます」(ホール営業本部長)
一度受け取ったものを相手の顔を潰さないで返すマニュアルも作っておく必要がある。

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