前日の日曜日に予告チラシを入れたホールに一本の電話がかかってきた。
「AKBの大ファンなんですが、どうやったら打てるんでしょうか?」
話を聞いてみると18歳になってようやくパチンコを打てる年齢になった、ということだった。
対応に出た店長は「朝一番に来て、台が空いていたら打てますよ」と一からパチンコのことを教えた。
「初めてで、勝てますか?」
素朴な疑問だ。パチンコは運なので技量に差はなく初心者でもマニアでも大当たりを引くチャンスは平等にあるが、この質問には店長も窮した。
内心、こういうお客さんにはビギナーズラックで勝って欲しい、と思った。
「おカネはどれぐらい必要ですか?」
これもぐさり、と来る質問だった。4円コーナーに導入しているので1時間で2万円が溶けて行く光景がよぎった。こういうお客さんのためにも1円コーナーに導入しなければならない機種でもある。
「AKBのグッズは出ていますか?」
矢継ぎ早に質問してきた後で、「明日、朝行って並びます!」と元気に電話を切った。
18日、朝。
件の青年の姿はホールにあった。初めてパチンコ店に入ったことがすぐに分かるほど、オロオロしていた。顔もあどけなさが残っている。
店長は従業員に指示して、まず、年齢確認をさせた。
すると、本当に18歳になったばかりだった。
「何か分からないことがあったら、何でも聞いてくださいね」というと、待ってましたといわんばかりに質問攻勢となった。玉の借り方から始まって、打ち方、狙い方、ゲーム説明までを懇切丁寧に教えた。
時間にして40分ほどプレイして帰っていった。
勝っていれば、声も掛けたかったが、声を掛ける雰囲気ではなかった。
店長は思った。
「せっかく、新規ファンを獲得できるチャンスだったのに、おそらく1万円以上は使っているであろう、遊びを勧めら れない。昔は、4円でも1000円もあれば十分遊べたから、高校生が私服に着替えて遊びに来た。今は大人でも4円ではなかなか遊べない。ここに今、パチンコが抱える大きな問題点がある」
その日の夜、再び電話が入った。
AKBを打った18歳の青年からだった。
「おカネが全部尽きました。でも、楽しかった。どうやったら勝てるんですか?」
店長は機械が内部抽選方式になっている仕組みを説明した後、「1円パチンコで導入しているホールもあるので、そちらで打てばあまりおカネを使わなくても済む」とアドバイスして電話を切った。
大勝ちさせるために、深い嵌りを作るようになる。回るようにしても1個返しでは玉持ちが悪すぎて遊べたものではない。
ゆでガエル理論ではないが、遊技といいながら、実態はギャンブル化していることに気づかなくなる。

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