この年配女性客がホールで財布を落とした。
「財布がない!」と大騒ぎしたため、従業員も一斉に探し始めた。床をくまなく見たがどこにも財布らしきものは見当たらない。女子従業員は女子トイレにまで探し回った。
店長の判断で店内放送を入れた。
「お客様が財布を落とされました。足元をもう一度ご確認ください」
その放送を聞いて「ここにある財布ではないでしょうかね」と申し出てくれたお客さんが現れた。
その財布は申し出てくれたお客さんの隣の席の台の上皿に置かれていた。
「これです。ありがとうございます」
この話、女性客が財布を落としたのではなく、財布を上皿に置いたまま、トイレに行って戻ってきたのはいいが、自分が取っていた台が分からなくなっただけだった。
台取をするために財布を置いていた、ということは中身はたいした金額は入れていなかった。
店長は財布が無事見つかったことは嬉しかったのだが、それ以上にお客さんも一緒になって一生懸命探してくれている姿を見て感動した。
女性客は自分が忘れていたことにただただ恐縮するばかりだった。
「店長、すいませんが無事見つかったことを放送していただけませんか」
「もちろんですとも」
無事見つかったことも店内放送した。
マイク放送一つでお客さんが一斉に動いた事例としてこんなこともあった。
20年ほど前、北関東の郊外店でのできごとだった。
近隣のホールで車上狙いが発生している、との情報が入った。とっさに店長はマイクを握った。
「隣のホールで車上荒らしが発ししました。今一度車内に貴重品などを置いていないかご確認ください」
300台のホールで客は120人ほど入っていた。
すると、その放送を聞いて約半数の客がホールを出て、自分の車を確認しに行った。
財布は肌身離さず持っているだろうが、貴重品らしきものを車の中に置きっぱなしにしている客がそれぐらい多かった、ということだろう。
マイク放送一つでお客さんが一斉に動くというエピソードはこれだけに止まらないだろう。
もっとすごいエピソードを持っている人は、必ずいるはずだ。
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