「おはようございます。明日なんですが、○○市の『○○店』に視察に行ってみようと思っています。よろしければ一緒に行きませんか?」
日報で紹介した160個、32枚交換で高稼働を維持しているホールへ一緒に行かないか、という誘いだった。
日曜日の予定は入っていない。
交通費まで持ってくれるというので、これは行かない手はない。二つ返事だった。
すると「本日、博多で晩飯という手もありますが♫」
こうして、1泊2日の取材がスタートした。
新幹線の車内で合流して、博多に到着したのは8時過ぎ。博多めしを食うために車中は缶ビールを我慢する。
「鶏皮の美味しい店があるんですよ」
向かった先は博多でも人気店の「かわ屋」だった。9時の予約を入れていたが、店内は一杯で店の外の軒先のテーブル席に着いた。

「ここの人気はとり皮なんです」
最初は6本ほどからスタートしたが、追加、追加で1人20本は食べただろう。
9時以降も予約をいれていない客がひっきりなしで訪れる。
何度も博多を訪れているが、天神のさらに西のほうの警固まで行くことはなかった。つまり観光客が訪れるような中洲のような場所ではなく、地元客だけで賑わっているのだから凄い。
博多のとり皮で英気を養った後は、いよいよ明日は突撃取材だ。ホテルに帰ったのはとっくに日付は変わっていたが、痛飲したにも関わらず、不思議と酔ってはいなかった。
視察先に到着したのは2時過ぎだった。
1パチ、5スロの専門店で総台数は500台規模。店内はパチンコ、スロットともにほぼ満台で、空き台がないほどだ。
高稼働を続けているという話は聞いていたが、自分の目で見るとまた違った感慨がある。
午前中視察した、今年グランドオープンした2店舗は、いずれも悲惨な状態だった。特に大型店のパチンコの稼働は特に筆舌に尽くしがたい状態だった。
その光景が焼きついていただけに、余計この稼働がすばらしく映った。
もし稼働が悪かったら、そのまま帰るつもりだったが、ここは話を聞かずには帰られない。
カウンターで名刺を出して、店長を尋ねた。
すぐに事務所に通されて、店長が出てきた。アポなしでいきなりの取材申し込みだ。
「前にうちのこと書いていましたよね」
「はい、店名は出していませんが、ここのことです」
つまり、店長は日報の読者だった。それなら話は早い。
「取材時間はどれぐらいですか?」
「う~ん、10分、15分ぐらいで」
本当は1時間でも話を聞きたいところだった。
2階の会議室に通された。
時間がないので単刀直入に聞いていった。
1パチ160個、5スロ32枚交換営業を始めたのは2年ほど前からだった。市内に4店舗のチェーン店があるために、低玉貸し専門店にしたのが始まりだった。
業界では1パチがスタートした当初は4円に比べ、4倍遊べるというのが1パチのウリだった。
ところが、1パチでも等価営業が主流になってくると、遊べなくなってきた。
それをもう一度遊べるようにするには、160個交換しかなかった。
「スタートはよく回るんでしょうね」
「打っていただければ、分かります」
「設定も結構入っているんですよね」
「それも打っていただければ分かります」
時間通りに取材を切り上げ、まずは打って体感するしかない。
なかなか空き台がない。
座ったのは沖海だった。
800円目で初当たり。スタートはストレスなく回る。
その時だった。
肩を叩かれた。
「もう一度事務所に戻ってもらえますか?」
15ラウンドを消化したところで席を立つ。
今度応対に出てきたのは常務だった。
常務も日報を読んでいた。
「遊びたい年配のお客様に当店を選んで頂いています。等価がいいお客様は等価の店に行かれていますが、160個で1パチが遊べるという流れを作っていきましたが、それが間違いではなかった、ということです。それでスロットもそれに合わせました」
1パチでも等価となると釘は締まり、遊べなくなっている。低価交換は換金したときに損した気分になるが、おカネを使わずに長く遊びたい人の支持率がこの日の稼働にも現われ、9割近い稼働となっている。
「これなら5万稼働はありますよね」
「うちは年配のお客様が多いことから、夜の稼働はどうしても落ちてしまうので、5万稼働までは行きません」
詳細は企業秘密でもあるので、深い話はできなかったが、パチンコ営業の原点に返った結果の高稼働だ。
全国のホールが4パチを捨て1パチで16割分岐の営業スタイルにすれば、ゴト師、プロ集団、ウチコ軍団も割りにあわなくなるので、廃業していく可能性が高い。
設定は入れる、ストレスなくぶん回すことができる16割営業は、客にとっても店にとってもいいこと尽くめだ。
低価交換でも客を裏切るような設定や釘だから客は離れるが、正直な営業をすれば、パチンコを止めた人も戻ってくるというものだ。
ギャンブル志向を高めるだけの等価交換は、本来のパチンコの姿ではない。

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