仲良くなってサービス玉を余分に入れたり、出そうな台を教えたりするからだった。
機械が基板ものになって、裏基板が登場すると、営業中にトイレの天井に忍び込み、閉店すると天井から出てきて、裏基板を取り替えるゴトが流行るようになる。
この時、中国人による犯行が頻発したため、中国人お断りの張り紙を出すホールも都内にはあった。
このやり方が通用しなくなると、今度は店長が標的となった。特にギャンブル好きで借金を抱えているような店長が狙われた。
最初は客として言葉巧みに近づくと、外で会食するようになる。
酒池肉林の接待に篭絡されると、ゴト仲間に加わり、基板交換の手引きをするようになる。
ホールのセキュリティー対策が強化されるに従って、この方法も過去の話になってきた。
時代は流れた。
出玉系イベントが禁止されると、最後の差別化のために接客を強化するホールが増えている。
客との会話禁止は、石器時代の話。
今は、積極的にコミュニケーションを図ることが優先されている。特に孤独な年配客は会話を求めてホールにやってくる傾向が強い。
コミュニケーションの強化は図っても、会社の規則で客から金品をもらうことを禁止しているホールは少なくない。
そんな中で“事件”は起こった。
笑顔がかわいいカウンター係のA子さんは、ある日常連客からプレゼントを渡され、ついつい受け取ってしまった。
常連客は好意を寄せていたので、冗談半分に「受け取ってくれたらラッキー」程度の気持ちは持っていた。
受け取ってくれたものだから、有頂天となっていた。
受け取ったA子さんは会社の規則で禁止されていることをしてしまったものだから、だんだん罪悪感が沸いてきた。
包装は破らずに悶々とする日が続いたので、ことの顛末を店長に話した。
結局、プレゼントは返すことになった。
常連客に返したのは副店長だった。
「これ、まずいっすよね」
この対応に常連客は恥をかかされた気分になって、その店には二度と行けない雰囲気になった。
ホールの役職者の間では、常連客がA子さんに好意を持っていることが分かってしまったからだ。
今回の対応で問題となったのは、次の誰が悪いかということだった。
1.店
2.A子さん
3.常連客
プレゼントを渡した客が悪いのか?
禁止されている金品を受け取ったA子さんが悪いのか?
客に恥をかかせた店の対応が悪いのか?
コミュニケーションの強化を図って行けば、行くほど親しみを感じたお客さんの方はプレゼントを渡したくなってくる。
断って置いていくケースもあれば、断りきれずについ受け取ってしまうケースもある。
特定の個人ではなく、「皆で食べて」と団子を差し入れたおばあちゃんのケースだってある。
受け取ってしまった場合の返し方のマニュアルが、あるかどうかは分からない。
では、今回のケースはどう対処すればよかったのだろうか?
「受け取ってしまった店が悪かった、と、まず謝罪することが先決。『これ、まずいっすよね』という言い方は客の心を傷つけて、1人の常連客を失うことになっている。さらに、この件は対応に出た役職者1人しか知らないことを付け加える必要がある」(教育マナー関係者)
ホールでは名札に生年月日や血液型を書いているところもあるが、生年月日は誕生日プレゼントの原因にもなるので、これは止めたほうがいい。
話は変わる。
今から10年ほど前の全国大手のケースだ。
店長がお客さんと仲良くなり、結婚することになった。それだけなら、問題にはならなかったが、彼女が暴力団員の娘だったことから、店長は悩んで上司に相談した。
「結婚するなら会社は辞めろ」というのが上司の答えだった。
仕事を取るか、彼女を取るか、店長は決断を迫られ、結局、彼女を取って会社を去ることになった。
ホールには暴力団員だけではなく、その家族も遊びに来ている。

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