パチンコ日報

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極意!最強オバチャンが語るリーダーの心得 第1話

パチンコ業界で働く人を対象にした新連載がスタートしました。筆者はハンドルネーム作務衣さん。テーマはリーダーシップ。これを小説仕立てでお届けします。





《メインキャラクター》

主人公:野呂愛美(ノロ・マナミ)、昭和39年7月29日生まれ、熊本県天草市出身、血液型AB型、四年制女子大の文学部哲学科卒、二児の母、愛煙家、趣味は読書と音楽鑑賞およびテレビのドラマ鑑賞、ブログを書く、占いが大好き、愛車は赤のフォルクスワーゲンPolo GTI、町内のママさんバレーチームに所属、仕事はパチンコホールのパートのクリーンキーパー、通称「最強オバチャン」



《サブキャラクター/第1話》

登場人物:田中由美子(タナカユミコ)、昭和62年8月2日生まれ、福岡県久留米市出身、血液型A型、独身、愛煙家、趣味は読書とカラオケ、職業はパチンコホールのカウンタースタッフ



登場人物:田村忠・潤子(タムラタダシ・ジュンコ)、フランス料理の店「仏蘭西亭」のオーナーシェフと妻



◆最強オバチャンはパチンコ屋のクリーンキーパー



今日もhappyな一日を過ごした、のろまなmeです。

ひとっ風呂浴びて、達郎サウンドをBGMに三日ぶりでパソコンに向かっています。



今日の投稿写真は、二日前に納車されたばかりの愛車、赤のフォルクスワーゲンPolo GTIです。



突然の興奮状態を、お許し下さい。

ヤッタ~ッ!、やっと、キタ~!!です。



憧れの真っ赤なGTIのハンドルを握り、岩間の波しぶきを横目に、潮風を切って海岸沿いの道を駆け抜けたい。その夢が、やっと、やっと明日かないます。



明日は山下達郎のデビュー35周年のニューアルバム『WooHoo』を聴きながら、私の好きな英国の作家、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』を助手席に乗せて一人ドライブです。



本当は旦那と二人でドライブするはずだったのですが、急な仕事が入ってドタキャンされてしまいました。



予定は未定、人生は不確定要素の連続です。だから、それもまた良しです。

ドライブのGoalは海岸沿いにある国民休暇村。そこの天然温泉に入ってランチして帰ってくるつもりです。



昨日より今日、今日より明日・・・。ひとつずつ、ちょっとずつhappy気分を貯めながら“ココロの貯金箱”をhappy気分でイッパイにしたいmeなのでした。



今日のブログは此れにて終了~!

チーズをつまみにワイン飲んで寝ます。

明日が、楽しみです。

Good Night!



わたしは朝から忙しくて、まだスマホの動画を見ていなかった。今日は、新しい『社長のWebメッセージ』をダウンロードする日。



第一と第三月曜日が新メッセージ配信の日になっている。60秒の音声付きの動画なのだが、長めのテレビコマーシャルを想像すればイメージはつくと思う。



そして、わたしはこのWebメッセージをブログねたにもしている。最近はFacebookやTwitterがずいぶん流行っているようだが、わたしはベテランのブログ派。



本来、FacebookやTwitterとブログでは目的や使い方が違うと思っている。リアルタイムで誰かと繋がるより、日記がわりに日々のトピックスを記録して、時々自分の足跡をたどるのが性に合っているので、わたしはブログしかやっていない。



わたしの名前は野呂愛美(ノロ・マナミ)、生年月日は昭和39年7月29日、辰年生まれで星座は獅子座、血液型はAB型。某四年制女子大の文学部哲学科卒。



どちらかと言えばサッパリ、アッサリ系の気質で、いわゆる宝塚の男役タイプ。結構、多趣味で、読書は哲学系の本から推理小説、スマホ小説までいろんなジャンルを乱読。音楽は好みのアーティストが山下達郎。達郎サウンドのファン歴は長い方だと思う。それと、日本も韓流もテレビドラマは好きでよく見ている。最近のマイブームは占い。



そして、男の子と女の子の二児の母でもある。ストレス解消で町内のママさんバレーチームに所属して、毎週月曜日の練習は欠かさず参加している。仕事はパートでパチンコホールのクリーンキーパー。



ひらたく言えばパチンコ屋の掃除のおばちゃんだ。



そして、職場のPalor Dream総武店ではちょっとした名物おばちゃんで通っていて、「オバチャン」と呼ばれている。



職場にはわたしの他に同世代のクリーンキーパーさんが5人いるが、他の人たちは苗字にさん付けで呼ばれていた。でも、わたしだけは通称「オバチャン」で通っている。



もしかしたら、世のおばちゃん族の典型、標本的な存在と見られているのかも知れない。あるいは、誰がいつ頃名付けたか憶えていないが「最強オバチャン」の異名を取るようになってから、頭の「最強」が消え、「オバチャン」だけが残ったのがその理由なのかも知れない。



プライベートでは、旦那とイイ関係をキープしていて、最近よく耳にする晩年離婚の話とは無縁だし、イイ感じの距離感を保ちながら夫婦をやっている。



ちなみに、旦那はフリーの経営コンサルタント。ちょっと風変わりなところはあるが、感性の波長がわたしと同じなので別に気にはならない。子供たちはどちらも社会人で、もういっさい手がかからない状態。



そんな訳で、今のわたしは第二なのか第三なのか、自分の人生を自分流で楽しんでいる。そして、かっこつけた言い方をすれば、自分の人生の主役は自分自身。これがわたしのクレド(信条)だ。



わたしが勤めるPalor Dream総武店は、今日も、相変わらず多くのお客さまにご来店いただいていた。



地域密着の経営方針が地元のお客さまに浸透しているようで、店舗の規模はそれほど大きくはないが、家族的な雰囲気のいい店として常連さんがしっかりと付いてくれている。おかげでわたし達クリーンキーパーも、毎日、忙しく動き回っていた。



わたしの腕時計の針はもうすぐ昼の十二時を指そうとしていた。



遊技台の吸殻回収の作業を終え、やっと一息ついた。ホール端の通路で入客数を「集計表」に記録していたカウンターの山本由美子が話しかけてきた。メゾソプラノ系でマイクのりのいい、親しみを感じる声だ。



「オバチャン、今日の『社長のWebメッセージ』見た?」



「今日は早番のキーパーさんがひとり休みだから、バタバタで、まだ見てないのよ」



「今日の社長、なかなかいいこと言ってたよ」



「あら、そう。由美ちゃん好みの話だったのね」



「ピンポン!です」



「由美ちゃんのハートをジャストヒット・・・」



「だって、アランの『幸福論』だもん」



由美子の趣味は読書だった。本人の話だと一人っ子で、幼い頃は内気な性格だったらしく、一人遊びをすることが多かったようだ。そして、自然と読書が好きになったと聞いている。



十代の頃はどちらかというと純文学系を読んでいたらしいが、最近は東野圭吾や道尾秀介の推理小説にはまっているようだ。わたしと由美子は趣味が一緒ということもあり、本を話題にお茶することが多かった。



「『幸福論』は由美ちゃんの携帯本だったよね」



「そう、わたしのお守り。人生の指南書なんでいつもバッグのなか」



「今の子には“指南”なんて死語じゃない。それに人生の指南書なんてフレーズ、殆ど聞かないよ」



「そうかな、わたし古いのかな?」



「見た目は若いけど、結構、耳どしまかも」



「耳どしま、ですか」



「わたしは本当の年増(としま)だけどね」



「オバチャン、見ためはまだまだイケてるよ」



「ありがとさん、イイ娘だね~っ」



「どーいたしまして」



「まっ、気持ちは二十代、体型は三十代・・・」



「かなりの自信ですね~」



「自分で言わなきゃ、誰も言ってくれないからね」



わたしと由美子のやりとりはいつもこんな調子で、息の合った母娘漫才コンビが舞台で得意ネタを演じているような感じだった。



そして、日頃の若い子たちとの会話は、医学的な根拠はなにも無いが、わたし的には若年性アルツハイマー防止の脳の活性化トレーニングになっていた。



「ところで、社長、どんなこと喋ってた?」



「お題の名言だけ言うね。あとはスマホで動画をちゃんと見て下さい」



「りょ~かいっ!」ちょっと首をかしげ、精一杯の茶目っ気を披露しながら言った。



「今日のは、《人は幸せだから笑うのではない。笑うから幸せになるのだ》byアラン、です」名言を意識してか、口元をぐっと上げ笑顔で由美子が言った。



フランスの哲学者、アランのプロポ(語録)集である『幸福論』。由美子が口にしたフレーズは、アランを知っていれば、最も記憶の上位にあるものだった。正に、想定内の名言だった。



「ならば、《悲観主義は気分に属し。楽観主義は意志に属する》byアラン、で返しとこうかね」



「さすが、最強オバチャン、博識。四大の哲学科卒は違いますねぇ~」



「お褒め頂き、光栄です」



わたしは、わざとらしく軽く頭を下げてみせた。



「読書の量は若いもんには負けませんよ。長く生きてる分だけ出逢いも多かったんで・・・。でも最近、記憶から消える本の数もハンパないけどね」

わたしは無意識に吐息をはいていた。



「気持ちの衰えはゼロだけど、記憶の衰えは・・・どうしてもねっ」



「それはしょうがないでしょ、歳とともに記憶力は落ちて当たり前。生身の人間なんだから・・・。じゃなかったら、最強オバチャンを通り越して、怪物オバチャンだよ」



由美子は顔の横で招き猫の手を真似ながら、わざとらしく目を細めてみせた。



「巷ではおばちゃんは既に怪物扱いされているから、それを言うんなら、緑色の血液が流れる妖怪オバタリアン、てなとこじゃない」



「妖怪オバタリアン、いいネーミングですね」両手を叩くふりをして、小鼻をピクピクさせて由美子が言った。



「われながら、今日は絶好調・・・」



「自画自賛し過ぎです・・・ツッ、ツッ、ツッ」



由美子はわたしの目の前にぐっと人差し指を出して、メトロノームのようにその指を左右に振ってみせた。



ここで、『社長のWebメッセージ』について、少し説明をしておきたい。



わたしが働いているPalor Dream総武店ではインターネットを活用した人材育成システムを使っている。



グループ全15店舗、全店が使っていて、社内では通称ダーウィンと呼ばれている。進化するシステムと云うのがイメージで、『進化論』を書いたチャールズ・ダーウィンから名前をとったのだと店長から説明された。



でも、本当のところはどうだか、わたしには分からない。そのダーウィンの一部の機能としてこの『社長のWebメッセージ』がある。



一言でいえば、月に2回、社長の60秒トークをスマホやケータイで見る。



そして、社長の考え方や会社の方針、社長の人柄に触れ、会社と従業員の信頼関係や絆を深めることを目的とした動画配信だ。少なくとも、わたしの受け取り方はそうだ。



大変だろうとは思うのだが、社長は毎回それなりに工夫して話をしてくれていた。わたしはいつも、それを楽しく見せて貰っていた。何と言ってもスマホやケータイでダウンロードして見ることができるので、場所と時間の拘束がないから便利だった。



わたしが最近の内容にタイトルを付けるとすれば、『社長厳選!感動の名言集』てなところだ。いろんな人物の金言名言を探し出し、社長流の解釈を加えて紹介してくれるので、わたし的には好感度は高い。ブログのねたでも使わせて貰っているので他の人以上にこの動画の価値評価は高めだ。



わたしは手にタバコの吸殻回収容器を持ち、由美子は「集計表」を胸元に抱えてホール端の通路を歩いていた。



「オバチャン、明日も早番だよね」由美子が言った。



「ええ、そうよ」



「あのさ、ディナーしながらちょっと相談にのって欲しいんだけど、駄目かな?当然、カウンセリング料を含めてディナーは無料ご招待ってことで・・・」



「あたしのカウンセリング料、結構、高いよ。かどのガルボアのハンバーグ定食ぐらいじゃすまないよ。その先の、和光銀行の隣の仏蘭西亭。あそこのコースディナーを要求したいけど懐具合は大丈夫かい」わざと真顔で、堅めの口調で言った。



「大丈夫、ボーナス出たばっかだから・・・余裕、余裕」由美子はニヤッとして自分の胸を数回、軽く叩く仕草をしながら言った。



「オッケー、契約成立。明日の仏蘭西亭でのカウンセリング依頼、お受けしましょう」



「サンキューです。わが社の産業カウンセラー、最強オバチャン。では、野呂先生、明日はよろしくお願いします。お店の予約はわたくしめがキッチリと入れておきますので」



由美子は立ち止まって、深々と頭を下げた。



「お任せあれ。恋の悩みから人生の重大な選択まで、あなたのご相談に最良のアドバイスを致しましょう」



由美子のつま先から頭の方へゆっくりと視線を上げながら、自分の胸をポ~ンと叩いてみせた。



わたしはかれこれ一年くらい、由美子と一緒にPalor Dream総武店で働いていた。趣味の読書を通して互いの気心は知れていた。また、由美子は親元を離れて一人暮らしのせいか、わたしを第二の母のように慕ってくれている。わたしにもそのことはよくわかっていた。



◆由美子の気づき



週中の平日、仏蘭西亭にはわたし達の他には二組のお客しかいなかった。わたしと由美子はテーブルキャンドルが置かれた道路に面した窓側の席に座っていた。



色鮮やかなステンドグラス風のガラス容器に入ったフレグランスキャンドルから心地よい香りがかすかに漂っていた。そして、わずかに赤みを帯びたキャンドルの炎がゆっくりと揺いでいた。



「二人お揃いでのご来店は、久しぶりですね」シェフの田村がコースの最後に出すデザートをテーブルに並べ、二人の顔を覗き込みながら言った。



「四ヶ月ぶりかな?」由美子が言った。



カウンターの隅にある洗い場では田村の妻の潤子が今しがた帰ったお客様のテーブルから引いてきた皿を洗っていた。



「そんなもん・・・?、かも知れないね」洗い場で片付けをしている潤子の方に目をやりながらわたしは答えた。



「マスターと奥さん、二人でやってるからいろいろ大変でしょ。でも、やっぱ奥さんの方が大変だよね、お店の切り盛りと子育ての両方だから」さり気なく、しかし、潤子の耳に声が届くように言った。



洗い場にいる潤子が手を休め、テーブルの三人の方を見た。



「いえ、野呂さん、そんなことないですよ。子供たちは自分のことは自分でやってくれるし、上のお姉ちゃんが家の事は殆どやってくれてます。わたしは主人とお店のことだけ考えてればいいんで・・・」潤子は明るく答えた。



「そうか、お子さん達もそんなに大きくなったんだ・・・」



わたしは子供たちの幼い頃の記憶が鮮明すぎて、時間軸の目盛を移動するのを一瞬忘れていた。自分の子どもが成人していることを考えれば、人さまの子供だって成長していて当たり前。自分の言葉に苦笑してしまった。



やはり、日頃会う機会がないと、記憶の空洞化で時間がスッポリと抜け落ちてしまい、ついつい強引に過去と今を一点で処理してしまう自分がいるた。



やはり、若年性アルツハイマーの話がただの冗談では済まない年齢になったことを認めざるを得ないのだろう。



「ところでオバチャン、さっきの話の続きなんだけど・・・」デザートのフルーツとアイスクリームを口に運びながら由美子が話し出した。



「カウンターリーダーになるって話の続きね」わたしは由美子の顔にあらためて視線を向け直しながら言った。



「そう。リーダーって肩書き貰うと、うちの会社はいろんなことやらなきゃいけないのよ。重点課題になってる人材育成はコーチングの勉強があるし、5ヶ月コースのリーダーシップ研修も受けなきゃいけないし・・・」



由美子はテーブルのキャンドルにちょっと目を落とした。



「他には・・・、新卒研修の社内講師もあるでしょ。通常業務以外のプラスアルファーが、結構、重たいんだよね~」



エスプレッソコーヒーの入った白いミニカップにミルクと砂糖を入れ、ゆっくりとスプーンでかき混ぜながら由美子が言った。



「でも、由美ちゃんは、努力を惜しまないし、頑張り家さんだから・・・。それに、新人さんや後輩を育てるのも上手だし、人前でも要領よく喋れるじゃない。コミュニケーション能力は高い方だよ」



「人前で話すの嫌いじゃないよ。それに、何かを教えるのも苦手なほうじゃないけど・・・でも・・・」



由美子の言葉の歯切れはあまりよくなかった。



「それに次長から、いまカウンターはリーダー不在だから今年の新卒フォロー研修のカウンター関係の研修提案書をわたしに作れって話がきてるの。パワーポインターで打ってメールしてくれって。来月の幹部会議で社内プレゼンするらしいんだけど・・・」



由美子は話を続けた。



「書き方も内容もまかすから現場の視点で要点を絞って端的に書いてくれればいいって。でもさ、次長に出すってことは会社に出すってことだから・・・。それに提案書って、《はじめに》とか《現状の問題点》とか《課題への対策》なんて感じで書かなきゃいけないでしょ。オバチャン、なんか全部が悩ましいんだよね。ネガティブな気分って言うか・・・」



そう言うと由美子は残りのコーヒーを口にしながら、窓ガラス越しに見える夜のとばりが降りた歩道へ目をやった。視線の先には街灯に照らされた街路樹と整然と並ぶビル群があった。



行き交う人はまばらだった。道路を走る車の、色合いの違うヘッドライトの光線がいくつも重なり合っていた。昼間の温もりのなごりとヘッドライトの光が混ざり合い、遠くの街並みは蜃気楼のように感じられた。



マスターご自慢のBOSE製のスピーカーから山下達郎の『ずっと一緒』が流れてきた。わたしは、以前、田村夫妻も山下達郎のファンだと聞いたことがあった。



『抱きしめて 静寂の中で あなたの声を 聞かせて

 冬はもうすぐ 終わるよ 

 幾つもの 哀しみを くぐり抜けた その後で 

 繋いだ手の 温かさが 全てを 知っている 

 あなたと 二人で 生きて 行きたい それだけで 何もいらない

 昼も夜も 夢の中まで ずっと ずっと 一緒さ』



楽曲のややスローなサウンドが外の風景に漂う時間(とき)の余韻と同化していた。ありきたりの表現だが、わたしは銀幕の世界のワンシーンを眺めているようだった。



ドラマのタイトルは忘れたが、この曲は、2008年頃に放送されたフジテレビ系の月9ドラマの主題歌だったと思う。香取 慎吾と竹内 結子が「フラワーショップ雫」を舞台に展開するラブストーリー。ドラマの中の幾つかのシーンが目の前の風景とオーバーラップして脳裏に蘇ってきた。



わたしはさっきからずっと由美子の深層心理を読みとろうと、言葉と表情にできるだけ意識を集中させていた。いわゆるカウンセリング技法の基本中の基本、“傾聴”の態勢を取っていた。



「じゃあ、由美ちゃんの頭の中を整理してみようか」



「うん、お願いします」



「まず最初に、カウンターの女の子たちのまとめ役をやるのはオッケーだよね」



「カウンタースタッフをまとめることはできると思う。キャリアも年齢も一番上だし」由美子は即答した。



「そろそろ、カウンターリーダーをやってくれって会社から言われるのも、薄々感じてたんでしょ」



「うん、まあねっ」由美子が言った。そして、話を続けた。



「先々月に吉田リーダーが寿退職したあと、私がその代役をやらなきゃいけないんだろうなって、何となく思ってた。でも、いざ正式にカウンターリーダーになれって言われると、あれもこれもって考えてしまって。そして、何となく肩書きが重荷に・・・」



いくつかのねじれた輪が絡んでいる知恵の輪。できそうと思ってやってみるが、うまく外せない。何回かやってみるができない。最初は簡単そうに見えたのに・・・。そのうち、コツがつかめない苛立ちが戸惑いへと変わる。そんな感覚が由美子を包んでいるようにわたしには思えた。



「リーダーになることへの気持ちの壁、どこにあるのかな・・・?」由美子の表情の変化に注意しながら言葉を続けた。



「さっきからの口ぶりだと、何となくプラスアルファー部分にありそうだよね。新卒者研修とか・・・?」



わたしは由美子の表情の僅かな変化を追った。そして話をもっと具体的に絞り込んでゆくことにした。



「新卒研修の社内講師。これって二つ、細かくみれば二つの段階に分けられるよね」



「ふたつ?」



由美子は首をかしげながら、ちょっと不思議そうな表情を見せた。



「そう、ふたつ」



わたしは人差し指と中指を立て、V字を作って由美子の目の前にわざと手をぐっと差し出した。



「一つ目は、そのものずばり。新卒研修でカウンター業務に関して社内講師という立場で研修を実施する。平たく言えば、先生として喋ることね」わたしは由美子の目を見てゆっくりと言った。



「もう一つは、その為のシナリオを書く。これは、どんなやり方で研修をすすめるのかどんな話をするのか、その方法と話の要約を整理して提案書と云うカタチにするってことだよね」



由美子のわずかな心の動きを読むために、表情や仕草にさらに注意を払いながら言葉を続けた。



「これらは一連の流れだけど、分けて考えると二つだよね」



「確かに、そういう分け方をすれば“ふたつ”かな」由美子が言った。



「わたしが想像するに、講師として喋ることは多少の不安はあっても、まんざらでもない」



「まあね、単純に自分の仕事を喋ればいいんだったら、やれないことはないって思ってる」穏やかな口ぶりで由美子が答えた。



わたしはスパイダーで分けられたダーツボードの真ん中、ダブルブルに、第一投目からダーツを命中させたかった。



「由美ちゃんは前段階のシナリオを書く、研修提案書を書くってところに抵抗があるのよ。その一点が気持ちにブレーキをかけてる。その事が根本原因で物事の全体像をネガティブに捉えてるのよ。そこをどう乗り越えられるかが一番の課題だと思うわ」



わたしは日頃から、何かを相談され相手にアドバイスをする際はできるだけシンプルに核心のみを言うように心がけていた。そうしないと、こちらの言いたいことが上手く伝わらないばかりか、相手の混迷をいっそう深める恐れがあると思っていた。



「由美ちゃんはカウンター担当者としてはほば完璧。通常の接客応対はもちろん在庫管理からPOSシステムの操作、そしてお客様のクレームや軽いトラブルまで殆ど対処できてる。それに、新人スタッフの指導も上手。その上、お客様からの支持も高い。だって“グッドスマイル&ホスピタリティ”のお客様からの得票では由美ちゃんは毎回ぶっちぎりのトップだものねっ」



わたしは軽く微笑ながら言った。



「そう言って貰えるのは本当にありがたいわ。わたし学歴はないし、頭もそんなにいい方じゃないけど、前を見て、当たり前のことを当たり前に徹底してコツコツやり続けなさいって小さい頃から母に言われてきて、それだけは守ってるつもり」



ここ数ヶ月会っていない、母の顔をふっと思い出したようだった。



「当たり前のことを当たり前に、しかも徹底的にコツコツと。そして、継続は力なりって訳ね。お母さんいいこと教えてくれたわね」



これは、わたし自身が大切にしている生活信条でもあった。



由美子はテーブルにあるフレグランスキャンドルの炎をしばらく眺めていた。そして、ゆっくりとカップに残ったコーヒーを飲みほした。



それはテーマパークにある迷路アトラクションの中で迷っている自分の姿を、もう一人の自分が上空から眺めているような不思議な感覚の世界に浸っているようだった。由美子は、目の前に大きく立ちはだかっている壁は全体からすれば、ほんの一部、たった一つの壁でしかないことを自覚してくれるだろうか。



「視点を変えれば、見えないモノが見えてくる」と教えられたことがあると、以前、由美子が言っていた。そして今、その言葉が由美子の過去の記憶の中から鮮やかに蘇ってきてくれることを、わたしは期待していた。



「オバチャンと話してて、自分の頭の中が少し整理できそう。ちょっと投げやりな自分になってた原因が何となく見えてきた」由美子が言葉を続けた。



「わたし小説は好きで読むけど、ビジネス系の本は殆ど読んだことないの。だから、ビジネスで使うキチッとした文章を書くのは苦手なんだ。まして、提案書なんで言われると書き方とか言葉の選び方とかあるし、それに短い文章で分かりやすくなきゃいけないって思ってしまう・・・」



由美子は一息いれて、穏やかな口ぶりで話を続けた。



「だから、苦手意識が自分の中で膨れ上がってきて、それがすごいプレッシャーになるの。そして、その事で頭がいっぱいになって、全部が嫌になってくるんだよね。憂鬱な気分になって・・・。これって良くないんだろうけど・・・」お店の壁にかかったアンティーク時計の方に視線を送り、自分の気持ちをあらためて確認するように由美子が言った。



「そうね、由美ちゃん。ちょっとしたところだけど、変えたいね。そこんとこ・・・」



わたしは軽い安堵感を覚えていた。



「それに、今のはしっかりとした自己分析になってるよ」



由美子の顔を軽く覗き込むようにして話を続けた。



「以前読んだ本に、欠けたドーナツって話が書いてあったの。目の前に1個の丸いドーナツの絵があると想像して。そして、その丸いドーナツの一部がほんのチョットだけど欠けてる。すると、人はその欠けた部分に意識が引っ張られて、その欠けた部分がついつい気になってしまうものなのよ。この話は、人は相手の長所と短所という全体を見ずに、どうしても相手のわずかな欠点にばかり意識を向けてしまう傾向がある。そしてそれを元に相手を評価してしまうことが多いってことを言ってるの。数時間前までの由美ちゃんは自分自身に対してこの話と同じことをやってたのよ」



いつもの由美子の明るい表情が戻りつつあった。



「オバチャンが言ってる意味はわかる。って言うか本当は自分でも薄々分かってたはずなんだよね。でも何となく面倒になって、自分をごまかして逃げられるものなら逃げたいって思ってたっていうのが正直なところかな」



気持ちの中のモヤモヤが消え、ある種の開放感が由美子の気持ちを覆っているように見えた。



「わたし頑張ってみようかな。カウンターリーダーになって、わたしらしいリーダーシップを出してみようかな。それに新卒のフォロー研修のことも・・・。苦手なハードルを一つ乗り越えなきゃいけないけど、次長に相談しながらチャレンジしてみる。せっかく次長もああ言ってくれてることだし・・・」



わたしは由美子の目に輝きが戻ってきたことが嬉しかった。



「人は誰だって必ず苦手なことの一つや二つはある。でも、そこに意識を向け過ぎると前に進めなくなる。それが心の壁になって行動できなくなる。だよね」



「そう言うこと」わたしは由美子の言葉に少しお大袈裟に頷いてみせた。



「だから、わたしはとにかく逃げずにやる、チャレンジするって思えばいいんだよね。わたしは苦手意識を克服して、苦手なことでも必ず出来るようになるって考えればいいんだよね、オバチャン」



自分に言い聞かせるように、言葉を噛み締めながら、しっかりとした口調で由美子が言った。



「その通りよ、由美ちゃん。まずは、そう信じることが第一歩。それがあれば、必ず存在感のあるリーダーになれると思うわ。そして、周りもついてくるし、周りの人たちを幸せにできるはずよ」



私は由美子の言葉を聞きながら、以前ネットサーフィンをしていて見つけたブログの中身を思い出していた。そこには、アファメーションのことが書かれていた。



「アファメーション」(肯定的な宣言の言葉)というのがある。アファメーションは、自分に対して意識的によい言葉を選んで言い 続けることで、自分の意識や心のあり方を変え、自分の目標を達成させる方法。



人間の傾向として、無意識に、直面している問題をうのみにして、本来ならば問題を解決することのできるはずの自分の能力を限定してしまうような形で自分に対して語りかけることがある。アファメーションは、意識的に肯定的な言葉、問題解決を促す言葉を自分自身に語りかけ、無意識に繰り返していた否定的な言葉から自分を引き離し、いま限界と感じている意識を変化させるものです。



例えば、ついつい口にする「できない」という言葉を「できる」という言葉に変えていくだけで、気持ちが変化し、今まで見えなかった方法が見えてくるようになったりするのです。わたし達の心にはもともと大きな力(潜在意識)があります。しかし、その力は普段はほとんど 眠ったままの状態だと言われています。



アファメーションは自分に対して意識的によい言葉を言い聞かせて、わたし達の心の大きな力(潜在意識)が働くようにしていくのです。



だいたいこんな内容だったとわたしは記憶している。そして、わたし自身もこの潜在意識の存在を信じているし、その意識と宇宙、厳密に言えば宇宙の創造主と繋がっているのではないかとさえ思っている。



「オバチャン、《人は幸せだから笑うのではない。笑うから幸せになるのだ》byアラン、だよね」由美子が言った。



「そうよ、《悲観主義は気分に属し。楽観主義は意志に属する》byアラン、まずは自分の意志ありき、そして行動ありき。その行動があるから結果もついてくる。アラン流の楽観主義で前進あるのみよ、由美ちゃん」



わたしはアランの『幸福論』、93章「誓うべし」の中のある文章をあらためて思い出していた。アランによれば「根本的には、上機嫌などというものは存在しないのだ。しかし、正確に言えば、気分というものはいつでも悪いものであり、あらゆる幸福は意志と抑制とによるものである・・・云々・・・」ということだが、わたしもこのアランの考え方に賛成する一人だ。



或ることわざがある。ギリシャのことわざらしいが、わたしはこのことわざを自分の行動の原点に置いている。



《幸運の女神に後ろ髪はない。あっという間に過ぎ去ってしまう》その意味は「幸運や良縁は気をつけておかないと一瞬のうちに逃げ去る。後で気がついても手遅れで、それをつかむことは出来ない」だそうだ。



ある人が、《人生は幸運の女神の前髪をつかみ、その手を振り回す覚悟がなかったら幸せになれない》と言っていた。おそらく、このことわざを知っていたのだろうし、さらに、その意味を面白く表現したかったのだろう。



わたしは《前髪をつかむ》方が好きだ。また、野球好きならこんな言い方をするのかもしれない。《甘い初球のストライクは二度と来ない》と・・・。



やはり、アランが言うように、幸福になる為には、まず幸運の女神に気づくこと。そして、前髪をしっかりとつかむことが必要なのだ。その為にまずやるべきことは、《意志の力》を信じて、目の前の一日一日を大切に積み重ねる覚悟を持つこと。



そして、物事をシンプルに考える癖をつけること。だから、《当たり前のことを当たり前に徹底してコツコツやり続ける》を日頃の行動の根本にすればいいのだと思う。



これはあくまで余談だが、ユーロ圏のみならず世界経済に大きな波紋を投げかけたギリシャ財政危機。もしも、このことわざが古代ギリシャのものなら、時間の経過とともに、現代のギリシャ人はその意味を誤解してとらえてしまったのかも知れない。



わたしは人の生活、人生は、偶然性や想定外の出来事がたくさん散りばめられた物語だと思っている。そして、得てして人生の大きなターニングポイントにはそれらが絡んでいることが多いように思う。



また、その偶然性や想定外、良く言えばチャンス(時にはピンチの場合もあるが・・・)を「そのタイミングで」「その先に」活かせるかどうかはやはり《意志の力》にかかっていると言えるのだろう。



ただ残念なことに、わたし達はついつい自分の都合で色メガネをかけてモノを見てしまうことが多い。そのメガネの色が自分の目の前に現れた幸運の女神の姿を消してしまって、気づかないことがしばしばあるのかも知れない。



仏蘭西亭の壁時計の針は10時を回っていた。オーナーシェフの田村が二人のテーブルに近づいて来た。



「今晩のコースメニューとグラスワインの相性はいかがでしたか。満足して頂けましたか、おふた方とも・・・」



わたしの方にさり気なく視線を向けながら田村が言った。



「ちょいとチャレンジしましたねっ、マスター。ワインをいつものバッカス種のブドウの中甘口からオルテガ種のブドウの甘口に変えましたか?」



「そして、今日のグラスワインは、もしかしたら、ヘアゴッツ・トレプヒェン《神様の滴》だったのかしら・・・?」



「さすが、ワイン好きの野呂さん。その通りです。デザートワイン系なので甘すぎなかったか、お料理とのバランスはどうだったのか、少し気になりまして・・・」



「《神様の滴》はわたしの好きなワインだし、相変わらずお料理も美味しかったわ。わたしだけのことで言えば、全然、問題なしですよ」



由美子は二人の会話をただ聞いているだけだった。確実に会話の外側にいた。わたしと田村の姿は、自分とは別世界の住人が会話をしているように由美子には映っているのかも知れない。



そして、由美子の言葉を借りれば、多分、こうなるのだろう。正に自画自賛だが、野呂愛美、このオバチャンは得体のしれない「最強オバチャン」だと・・・。



つづく



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人で態度を?

社長から店舗へのTELが不定期に入ります。



社長はいつもディスプレイ表示のない外線にかけてこられます。



私がその外線を取る場合、「社長かも…」と予見し、十数秒の間にすぐに答えられるよう、売・割・客数・競合動向などある程度のデータを開き、電話をとります。



社長TELは傾向として土日の午後4時ごろが多い。



土日も営業される熱心な(笑)メーカーさんからのTELもあり、「社長からのつもり」で万全の明るい声で受話器をとったところ「なんや、○○さんかいな」とちょっと不機嫌になったりします。



全てこちらの都合なので、○○さんの落度は微塵もありませんが、ちょっとムカつきます。



私以外の者が社長TELを取った場合、受話器へのおじぎや腰の浮き加減などその仕草で「社長やな~」と気づきを与えてくれます。



数十秒の会話の後、「社長からです。店長に代わってください、とのことです」ということで、その数十秒の間がなんとありがたいことか。



その間にデータを開くなど「社長対応モード」突入です。



ところがKリーダーが対応した場合は、事情が異なります。



社長であっても、アルバイトであっても、業者さんであっても、全く電話の声色やしぐさに変化がなく普通に丁寧な対応です。



社長じゃないなと油断していたら、「店長、社長からです」との言葉に慌てる私。



「社長TELの場合はもっと慌てろ。かしこまった仕草をしろ」などと文句を言っています。



日頃「急ぐことと慌てる事は違うぞ」と指導していますが、この件だけは例外で、Kリーダーからすると理不尽な要求に外なりません。



幼い頃、祖母から「人見て態度変えたらあかん。陰日向のある行動はあかん」といわれて育ちましたが、かしこまることや、声色が変わることは今回の様に合図でもあるし、敬意でもあるので、今では遺訓となった祖母の言葉は「道としては正しくも、術としては如何か?」と屁理屈をこねている私です。



しかし、素直になれば、まさしくシンプルな「金の言葉」。



「誰にでも丁寧に接しろ」と言う深いい意味も含まれます。



よって、私が反省すべきです。天国のおばあちゃんには直接、謝ることは出来ません。



Kリーダーは毎日、顔を合わせていますが、店長のプライドから謝る気はありません。



そこで、このブログを借りてお詫びさせてください。



おばあちゃん、Kリーダー「人で態度を変えてごめんなさい」



しかし、これからも、「態度を変える」ことは変えません。





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頭取りのシステム化で新台に頼らない営業の実践(実践編)

頭取りシステムを活用して、新台入れ替えに頼らずに大型店に勝つためにはポイントになるいくつかの項目がある。



いよいよここからが本題だ。



■ポイント1

競合店との比較判断基準を客数から稼働率に変える



例:日曜日午後3時



A店1000台→客数600人

B店500台→客数400人



稼働率

A店600/1000=6割

B店400/500=8割



どちらが客から支持されているかを見れば、客数では負けているB店である。



■ポイント2

エリア全体における人気機種の把握



どこのホールのどの台の稼働が高いかがポイントとなる。競合店がどの機種に本気で力を入れ、お客から支持されているかが分かる。



ここを切り崩すが、あるいは、他の機種で攻めるかの判断材料となる。ここでは新台の稼働率が高いことはあまり気にする必要はない。



■ポイント3

機種のグループ化で比較



店の看板台をピックアップして、競合店と比較することが重要。海などは機種が多いので「海グループ」として競合店と比較する。そのほか、MAXタイプグループ同士、デジハネグループ同士などとグループ化して比較する。



■ポイント4

競合店の入れ替えサイクルを把握し、違う視点から分析



競合店の1カ月の機械代コストを数値ではじき出し、自店の機械代と比較する。



この場合、大まかに新台は40万円、中古は10万円で計算する。競合店と同程度の機械代を使っているとすれば、それでも自店の稼働が悪いとすれば、他の理由を探すことだ。



その原因が接客態度だったり、クリーンネスだったりする。



競合店の機械代を予測、分析を継続的に繰り返すことで、「今月は他店より機械代を抑えたが、前月並みの稼働は維持できた」などということが感覚ではなく、数値で明確に分かってくるようになる。



■ポイント5

新台評価は展示会ではなく大型店で分析



タレントを招くような派手な展示会には行かないこと。地域の大型店で稼働のいい新台をチェックすれば機械情報は足りる。



■ポイント6

競合店のチラシチェック



チラシが入った日のデータで集客効果測定を行う。



システム化により、分析→仮説→実行



このサイクルを繰り返す。実行しないことには分析の意味もなくなる。



頭取りのシステム化で多角面から分析を加える。



例えば仮説で新台購入を止めて、中古に変える。それを勇気を持って実行する。また分析する。これを繰り返す。



こうやって分析を繰り返していくと小回りの効かない大型店の弱点や地域No1店の戦略が見えてくる。



頭取りで何より重要なことは店舗の変化を読み取れる鋭い眼力を持った役職者が行うことだ。



中小店舗は新台や設備等カネで買えるもので勝負しても大手には負けるだけ。中小は機械代を削ってでも客に還元することだ。機械は時間をかけて育成すれば、新台入れ替えに頼らずに粗利を確保することができる。



新台入れ替えの費用はすべて客の負担である。新台入れ替えを喜ぶのはメーカーだけである。



ホールにとってメーカーと客ではどちらが大切か? 結論は分かっている。経営者が客のために覚悟を決めた時に「パチンコファンに安心して、楽しんでもらえるホール」になることができる。







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頭取りのシステム化で新台に頼らない営業の実践(基本編)

営業戦略を立てる上で必要なことは次の3つだ。



1.戦う場所=商圏把握



2.戦う相手=競合店把握



3.自店の戦力=自店の状況把握



業界全体が「ファンを痛めつける戦略」を行い、ファンは急速に減少した。こいう状況下において、商圏分析の見直しと、戦略を再構築することが重要となってくる。



そこで最も手近なものが「頭取り調査分析」の見直しである。



これまで、頭取りによる商圏分析は「客数」が主流だったが、500台と1000台の店を比較して客数だけで比較しても意味がない。



加えて、新台入れ替えでお客が呼べる時代は終焉を迎えている。新台に客がついて喜んでいるが、それはウチコ軍団だったりする。



呉島社長が勤務していたホールは、新台入れ替えサイクルを大幅に延ばす作戦に出た。



当初の稼働はガタ落ちだった。



しかし、その分、現金は残った。



その資金で閉めていた釘を開け、徐々に信頼を勝ち取っていった。



その勢いに乗じて、2店舗目となる600台の新店を出店した。そこには地域に競合店は8店舗。直接のライバルとなるのは地域の強豪店だった。



強豪店は500台。建物、設備も古いが新台をどんどん入れ替えた。



600台の新店は内装もきれいで、漫画コーナーやマッサージチェアも完備した。居心地がいいはずだが、古い建物の強豪店には勝てなかった。



強豪店同様に新台もどんどん入れ替えたにも関わらず、グランドオープンから2カ月で一気に稼働が低下した。



この時に紙ベースの頭取り=客数だけでなく、支持率を出すことが重要だと考えるようになった。



そのためにはシステム化が必要で、システム化によってもっときめの細かい営業戦略構築ができる。



客数だけでなく、稼働率、機種の支持率を把握することが何よりも重要になる。



何よりも頭取りの調査のシステム化によって、他店が先行導入した機種の稼働率がデータベース化できる。



データベース化によって「機械の支持率」が見えてくる。



「無理に新台を買わなくても人気がある機種を中古で買えばいい」という考え方ができるようになる。



他店に新台が入った時は、稼働は落ちるが、それは一時的なもので、その分、機械代を使わない方がホールにとっては大きい。



ファンは新台よりも回ることを望んでいるケースが多いため、機械代を還元すればファンは根付くようになる。



つづく



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頭取りのシステム化で新台に頼らない営業の実践(イントロダクション)

頭取りシステムは今に始まった新製品ではないが、ソフトスタジオ(本社・広島市、呉島進社長)が提唱する新台入れ替えに頼らないで大型店に勝つ方法に耳を傾けてみよう。



話に入る前に呉島社長の経歴を簡単に紹介しておこう。



朝鮮大学校工学部を卒業後、朝信共同計算センターで10年勤務。その後ホール企業に入社して経理を担当していた。



現場店長が「隣の店に新台が入った。毎週入れ替えしている。このままではやられっぱなし。月粗利ノルマが達成できなくなる。機械代予算をもっと増やして欲しい」と社長に直談判している話を聞いていて常々新台に頼る営業に疑問が湧くようになっていた。



新台にはとりあえず客が付く。



新台入れ替えのチラシ代も無駄な経費に写ったが、現場の店長はチラシを止める勇気もない。



ホール企業に5年間勤務した結果、新台に頼らない営業戦略を考え、実践できるようにするためには、頭取りデータをシステム化(データベース化)することだった。



他業界を経験しているとパチンコ業界の商習慣も異様に見えた。



それがメーカーとホールの関係だった。



1.ワンボックス先行導入



2.抱き合わせ販売、機歴販売



3.メーカーの支社長、担当者の接待



中でも3番目は買う側で客の立場であるホールが、メーカーを接待するのが不思議だった。



機械が入らなかったら営業ができない、儲けられる時に儲けられなくなる、という危機感を植えつけられた結果である。



確かに新台を導入するだけで店が繁盛する時代があったことは事実で、その記憶がホールオーナーには刷り込まれている。



昔は新台入れ替えといえば盆と正月だったが、それがやがて3カ月に1回になり、メーカーの新台発表が毎月行われるようになって1カ月に1回となり、今は毎週のように行われるようになった。



この新台入れ替えサイクルが早くなることに輪をかけたのがコンサルの登場だった。



コンサルはホールをこう煽った。



1.どこよりも早く導入



2.どこよりも早く機械代を抜く



3.どこよりも早く機械を転売して、新台を入れる



コンサルが煽った新台戦略によりどういう結果を招いたかというと、「開店初日から玉を出さない戦略」となった。



これでは客が面白いはずがない。客の楽しみや期待を奪う戦略が長く続いた結果がファン減少へと向かわせている。



新台費用はすべて客の負担だ。



新台入れ替えを頻繁に繰り返して喜ぶのはメーカーだけだが、そんなことはホールオーナーは百も承知なのに、新台神話から脱却できない。



つづく



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