総部屋数55室。しかも、その6棟は10キロ圏内に散らばっているという。まるで不動産投資家のような動きだが、実はそうではない。家賃相場を見ても、例えば6畳一間にバス・トイレ付きで3万3000円。築30年が経過し、住人の半分以上が退去済み。まさに「訳あり物件」でもあった。
オーナーが食いついた理由は「安かったから」。実にシンプルだ。
投資家でもないオーナーがアパート経営を始めるわけもなく、ではなぜこんなものを買ったのか? その理由は、「寮にするため」であった。
現在、パチンコ業界では従業員の確保が難しくなっている。給料を上げるのも一つの手ではあるが、ホール側としてはなるべくコストは抑えたい。しかし寮を用意すれば、実質的に給料を上げずとも可処分所得を増やせる!という妙案に辿り着いたわけだ。
例えば都内でワンルームを借りると6~8万円はかかる。これを会社が負担し、寮費タダ、光熱費も込みとなれば、7~9万円の支出が浮く計算になる。給料は変わらずとも、手取りが増えるというカラクリだ。
一方、元の大家がこの物件を投げ売りした理由も明快だ。築30年が経過し、あちこちに不具合が発生。修繕費がどんどん膨らみ、もはや維持するのも大変な状態に陥っていた。
そこに目をつけたのがホールオーナーだ。「多少古くても住めれば問題なし!」という潔い判断で、まとめ買いに踏み切ったのである。
この「寮作戦」が早速注目を集めた。オーナーの知り合いのホールから、「うちの従業員用に貸してほしい」との申し出が入った。日本では給料が30年間上がっていないと言われるように、従業員の住居問題が意外と深刻のようだ。これはまさにオーナーの読み通り。安く仕入れた物件を寮として活用することで、人材確保の武器にする狙いが見事にハマった。
このホールオーナーの奇策、もしかすると業界全体に広がっていくかもしれない。
かつて、ホールの2階は寮になっていた。職住が接近しすぎて、公休日にも落ち着いて休めないという不満も聞こえてきて、ホール業界の近代化、新卒採用なども重なり、ホールの2階から寮が消えて行った。
可処分所得を増やす最良の方法として「ホール業界の寮ブーム」が再び到来する日も近い?
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