トイレがなかなか空かない理由の一つに、用を足した後でもスマホを弄っていることが少なくないためで、「トイレが空かない」と苦情を寄せられることもあった。
そういう事情をあらかじめ聴いていた設計事務所は、クライアントが1000台クラスの大型店を出店するにあたって、座り心地の悪いトイレをオーナーに提案した。
大型ホールなので女性用トイレは3カ所で15ブースが用意されていた。
しかしオーナーは「ホールの印象が悪くなる」という理由であえなく却下した。
スマホを弄ることで個室がなかなか空かないというのは世界的な問題で、トイレ休憩時間が長くなるあまりに、オフィスでの仕事効率が悪くなっていることが指摘されている。
実際に居心地の悪い便座を開発したイギリスのマハビール・ギル氏は、特許を出願している。特徴は便座が前方に13度傾いていることで「座り心地が悪くなり、長時間のトイレ占領を防ぐと共に、健康と生産性に効果的だ」と話す。
開発のきっかけはある日、高速道路のサービスエリアでトイレに立ち寄った時、個室の前に長蛇の列ができていて個人的に苦い経験をしたことによるものだった。なかなかトイレ出てこない人は、スマホを手にしている人が少なくなかった。この時、用を足した後でもスマホを弄っているのではないかとの仮説が立った。
「現在の便座は水平で、利用者は比較的快適に座っていられる。その結果、短期的な不快感を覚えずに必要以上に長く時間を費やす人がいる。必要以上にトイレで座っていることは一般的に望ましくない」とギル氏。
個室から早く出させるにはどうすればいいか? この問題に取り組むことを決意したギル氏は、便器の模型づくりからスタート。自分を実験台に実験を重ねた。その結果、11度前傾した便座には15分以上快適に座ることができたが、13度前傾した便座だと5~7分間座るのが限界だった。
加えて、傾斜つきの便座は、時間の無駄遣いにより生じている産業界の巨額の損失を減らすことができるほか、便座に長く座らせないことで、痔などのリスクを減らすこともできる。
駅やサービスエリアなどの大勢の人が一気に押し寄せる公共トイレにはうってつけかも知れないが、快適さをウリにするサービス産業の施設ではなかなか受け入れられることはなさそうである。
ちなみに四梅楼が運営する新名神の宝塚北サービスエリアは、トイレ渋滞を起こさないように女性用86ブース、男性用58ブース、と個室の数が半端なく多い。

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