独創的な発想を形にするプログラミング力が脳を鍛える「脳トレ」や家庭で気軽にフィットネスができる「Wiiフィット」を生み、それまでゲームに馴染みのなかった層を取り込み、ゲーム人口を増やすことにも貢献した。
かつて同時期に発売された「Wii」と「プレイステーション3」の違いについて、岩田氏は次のように語っている。
「私たちが戦っているのは『PS3』のような機械ではありません。ゲームに興味がない人たちに、興味を持ってもらうには何が必要かを考えて『Wii』を作ってきました。今あるゲーム機の10倍パワーを持ったゲーム機が登場したとして、それを自分は認知できても、家族は使いこなせるでしょうか。違いの分かる人だけを相手にするのは危険です。お客さんが興味を持つのは(映像が)きれいだからではなく、提案するゲーム機の内容が分かりやすく、面白いかどうか。従来の延長に答えはない。そう考え、非連続なものを作ろうと決めました」
岩田氏の経営判断の理念がこれだ。
「性能だけを追い求めると、ゲーム市場は縮小してしまう。興味のない人にいかに遊んでもらうかが重要」
この理念の下に「脳トレ」や「ウィーフィット」は生まれた。
パチンコ業界の遊技機の開発の仕方は、マニアックになりすぎてじり貧になって行ったPS3の姿とオーバーラップする。
「PS3のウリは映画を見ているようなリアルなCGだった。そのために開発費に占めるグラフィックスのコストが倍々ゲームで跳ね上がり、本来のゲーム性にかけるコストが削減され、ゲームの質が落ちた。ゲーム自体がつまらなくなってしまった。なぜ、パチンコ業界は任天堂の成功、ソニーの失敗をなぜ学ぼうとしないのか!」と話のは元スロットメーカー関係者。
今業界が突き進んでいるのがソニーのPS3路線だ。
ゲームとパチンコは違う、と前置きした上で、この元関係者はパチンコの開発のヒントをこう示唆する。
「ゲームは頑張ればクリアできる。将棋は強い人が100%勝つ。マージャンは運と実力。ところがパチンコやパチスロは釘を読む、設定を読むというプロセスがあるが、勉強する要素が小さい。ゲームとしての奥の深さが浅い。310個ある出目のサイコロを振っているようなもので、達成感、成長感が感じられない。そこにトバクという禁断の果実を入れて、面白い、と錯覚させているだけ。将棋は頑張れば強くなれるが、パチンコは頑張っても強くなれない」
サイコロを振るだけのゲーム性から脱却し、女性客でも興味を持つような機械を開発しないことには市場規模は先細るばかりだ。

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