近所に超優良店がある。
550台クラスの店舗だがビックイベント日には、朝から300人が並び、満台になる。
この店舗は新規開店から3年間が経つが、地域一番店の座を守っている。
恐らくマルハンが参入してきても、歯が立たないだろう。接客は合格点だが、私から見たら改善の余地はあり余る。
隣は等価交換の店舗で、ここも優良店だ。台数は540台。スロットが200台以上もある。
この店舗もビックイベント日には行列ができて、パチンコもスロットも満台に。
しかし、過去は閑古鳥が鳴いていた。
当初は2.5円交換。その後等価交換へ変更したが、低迷期はつづいた。
それでも、徐々に稼働が上がり、一度お客様が付きはじめると、一気に上昇気流に乗った。
この2店舗を劇団四季に当てはめると明らかに後者だ。
1983年の「キャッツ」の初演成功で上昇気流に乗った。
前回紹介した日経新聞の記事に載っていたが、今年夏に新規劇場がオープンする。
この劇場は、演劇業界初のチケットレスを採用したり、一度購入したチケットが都合で行けなくなった場合、劇団四季を通じて転売できるサービスも始まるという。
ステージ市場の規模は1671億円。
この数字はパチンコ業界から見たら小さな金額に映るだろう。
日本では売上金額で会社の優劣を決める人もいるのだが、これはものの見方を見誤る側面がある。
分かりやすく書くとこうなる。
自動車メーカーの場合、1台の出荷金額が100万円として、ディーラーが130万円で販売したとする。メーカーと販社では売上に30%の開きが出る。
小林製薬の今期の売上は1300億円。しかし、小林製薬の製品の小売金額はそれ以上だ。
食品加工にもなれば、この開きはもっと大きくなる場合もある。
ある餃子製造会社の場合、メーカー出しは餃子1個9円。これが飲食店でお客様に出される時は、1個60円にもなる。
だから異業種を見るときに、市場規模や売上金額に惑わされてはいけない。
日経の記事にも書かれていたが、不況で娯楽産業の苦戦が目立つ中、ライブエンターテインメントは比較的堅調に伸びてきたがは、2009年は多少減少するという。
そんな中で劇団四季は5ポイントの稼働上昇は、値下げ効果による観客動員数増加が寄与している。
しかし、その裏では、長年に亘り育ててきた劇団四季ファンの影響が大きく関与している。
16万人とも言われる会員を使って、上手く動員に結びつける戦略がそれ。
会員の家族をはじめ、友人や知人まで劇団四季ファンにしてしまい、それを囲い込む戦略は、今のパチンコ業界に足りない点でもある。
劇団四季や宝塚歌劇団などは、親子2代や3代に亘ってファンになっているケースが少なくない。
1983年のキャッツ初演の際を観た女性が、やがて母親となり今は子供を連れてキャッツシアターに足を運んでいる。
それだけではない。
劇団四季は年間50万人以上の子供を無料招待して、観劇を体験してもらっている。
東京で10年以上もロングラン公演しているライオンキングは、中学生や高校生の修学旅行の定番でもある。
彼らは将来の劇団四季の顧客でもある。
劇団四季は、こうやってコツコツと地道な活動をしながら、将来の顧客を育ててきたから今日の繁栄があるのだ。
これをパチンコに置き換えたとき、法律で18歳未満の立ち入りが規制が厳格化されているので、将来のお客様の開拓ができないのが現状である。
今のお客様の中には、子供の頃に親に連れられてパチンコに親しんだ人も少なくないだろう。
私もそうだった。手打ち時代に初めてパチンコに挑戦して、茶色い紙袋にお菓子をたっぷり入れた記憶がある。
では、これに変わるものは何か?
1円パチンコなどの低貸玉でパチンコのハードを低くしてパチンコ初心者を増やし、将来的にはパチンコの経営基盤である4円ユーザーになってもらいたい、という思惑があるが、現状はその方策が機能不全状態だ。
1パチと4パチでは客層が大きく違うと言われ、1パチユーザーはなかなか4パチに移行しないとも言われている。
どの業界でも右肩上がりで成長するには、将来のお客様を増やすのが常套手段で、これを怠った場合は、衰退するしかない。
衰退の代表格は今なら百貨店だろう。
百貨店業界の雄である三越は、若者ユーザーを取り込むのが遅れたため、業績は悪化の一途。九州には業績を維持している百貨店もあるが、既に日本の百貨店のビジネスモデルは崩壊している。
パチンコ業界は、この先に消費税が上がれば、第二の百貨店業界になる可能性は高い。
大規模チェーン店でも、この先の展開次第では、安泰ではいられないかも知れない。
実際、ある準大手ホール企業は、郊外店舗の入れ替え費用を都市部の店舗の利益から回している。
地区毎に分社化する計画もあったのだが、それをすると赤字店舗が表面化してしまうので中止になった。
梅昆布茶さんの寄稿に、ジャグラーを人身御供にしたホールの話もあったが、そんなホールは過去には何軒もあった。
地方のパチンコ市場を大手が進出して網で全部すくうビジネスモデルも確立されつつある。
業界は、市場を育てる方向に向かうのか? 市場を縮小させ大手ホール企業中心の市場育成をしていくのか?
今の戦略の舵取りが、10年20年後を決める。
ホール企業はその舵取りに身をまかせるのか?
それとも自己戦略で大海原にでるのか?
それとも薬局チェーンのように、大きな傘の下に入るのか?
先日倒産したホール企業は、不振のテコ入れに1パチを導入した。結局は起死回生策が裏目に出て、業績がさらに悪化して倒産しました。
実績があるホールしか1パチはビジネスベースに乗せられ難い。
東京に進出している北関東のあるホール企業は、地元では郊外店舗が多く、その大半が1万2000個稼働以下だ。
そこは固定客メインの営業をしているが、徐々にお客様が減少している、という。
1パチを導入した店舗もあるが、郊外ではその効果は限定的だ。
ある業界人はこう開き直る。
「この先、景気回復するまで耐え忍ぼう」
これは他力本願過ぎてどうしようもないが、この気持も理解できる。
業界として1パチユーザーをどう育てて、どう4パチユーザーになってもらうのか?
これをしないと安定したホール運営ができないのは明白。
私は4パチから1パチへ移行した常連客を何人も知っているが、1パチに慣れてしまうと4パチは怖くて遊べないという。
このままでは1パチのビジネスモデルは通用しなくなるだろう。
つづく
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