その売り場で中年夫婦の会話が業界人の耳に入って来た。
「こんな真っ黒くなったバナナは人間は買わない。よっぽど食うのに困っている人ぐらい」
「精々、ペット用に買っていくぐらいよね。でもこれじゃ、ウチのペットに申し訳ないわ」
ワゴンに盛られたのは、半額シールが貼られた、黒ずんでしまったバナナだった。

「バナナはその日に売り切るのが鉄則。半額で売るならこの状態になる3日前。ここまで黒くなったバナナを商品としてウチでは出さない。これが、ドラッグが生鮮に弱いところ。スーパーのノウハウがそもそもない。この状態で売ってはいけない。店の評判が悪くなるだけ。ウチの会社なら従業員にジュース用に無料で配る」
会話の内容から、どうやら、男性の方はスーパー業界の人のようだった。
その時、業界人とこの男性の目と目が合ってしまった。
すかさず業界人は「勉強になりました。お客の立場でこんなものを出されたら店の評判が悪くなるだけですね」と話しかけた。
すると男性は「ドラッグの関係者ですか?」と聞き返してきた。
パチンコ業界人であることを明かした。
すると、奥さんの方が「パチンコ屋のあの話をしてあげなさいよ」と男性をけしかけた。
50代の夫婦は2人共パチンコファンであることが分かった。
ある日、マイホールで客と従業員がトラブっている場面に遭遇した。その時の模様をスマホのカメラで撮影していた。
トラブルの内容は負けたお客が従業員に文句を言っているのだが、従業員は軽くあしらっている様子だった。負けたお客の気持ちを全く考えようともしていなかった。
「この動画を会社の教材にしました。もし、あなたがパチンコ店の店長だったら、どうやって丸く収めますか?というテーマで。お客さんの気持ちを考えればこんな対応はしないですからね。異業種研修のレポートに使わせてもらいました」
ドラッグストアーもお客の気持ちを考えれば、黒ずんだバナナなど販売しない。お客の気持ちが分かっていないとホールの対応も負けたお客の気持ちに寄り添うことなく、いい加減な対応になることを言いたいようだ。その対応は平気で黒ずんだバナナを販売することと同意でもある。
「カスハラという言葉を使う会社が増えていますが、それはとんでもないことだと思います。ウチの会社ではカスハラは絶対使いません。参考になるカスハラも沢山あるので、なんでもかんでもカスハラで括ってはいけない。特にパチンコ屋は負けるお客さんが大半なのだから、その苦情をカスハラとするのではなく、まず、共感することから始めるべき」
ホールの場合、やはりお客からの苦情が来るような営業(回らない、ベタピン)をしていることが問題で、それをクリアにすることから始めなければいけない。

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