ということは、面接に来てもらえるだけでも、ありがたいと感じなければいけないのだが、働いてみないとその人の良し悪しは分からない。
ホールで20代の女性スタッフを正社員として採用した。履歴書には健康は良好と書かれていたので、問題ないと判断した。
長袖の制服から半袖の制服に変わった時に、その女性の素性が現れた。
手首には無数のリストカットの跡があったのだ。それを見るたびにお客さんが引いた。ある意味刺青以上にインパクトがあった。
鬱の状態になることもあり、働いていても、体の動きが遅くなり、表情も笑顔はない。
接客業務には向いていない。ホールのイメージも悪くなる。かといって、それを理由に辞めてもらうことはできない。
接客が不向きであるのなら、他の部署への配置転換をしなければならない。
採用担当者は後悔したが後の祭りである。
捨てる神あらば拾う神あり。
鬱にならなければ、カワイイ顔をしているので、男性には持てた。
めでたく社内結婚。今は産休に入っている。
会社を退職したわけではないので、復帰することはあり得る。採用担当者は内心ビクビクしている。
こういうケースでは会社はどういう対処をすればよかったのか?
「病歴は聞いていいものと悪いものがあります。面接時にHIV、B型、C型肝炎の情報を収集することはできないことになっています。精神面の病歴は聞いてはいけないと思われがちですが、明らかに業務の遂行に支障がでる場合が多いので、採用時の面接では、精神疾患を含めた過去の病歴を確認することは原則認められています。ホールで病歴を聞いているケースはほとんどありませんが、エントリーシートに最近かかった病歴のチェック項目を作って、記入してもらえば、それである程度対処できます。病歴があるにもかかわらず隠していた場合は、自己都合で退職してもらうことはできます」(社労士)
では、産休後の復帰についてはどうなのか?
「やはり、産休に入る前に、事前に復帰条件を決めておくことです。遅番や土日は入れないとなれば、プログラムを決めたり、早番しか入れないのであれば、アルバイトとしての雇用になるなど、事前の取り決めが必要です」(同)
実際にリストカットの社員やアルバイトに遭遇するのは珍しいことではない。
「以前にリストカットの社員を採用してしまったことがあって、それからは、面接で刺青とリストカットの確認は必ずやっています。こういうことは一度経験してみないとその対処方法も分かりません」(ホール人事課長)
今回のケースでは全てが後手後手に回っているが、何事も事前の準備が肝要である、というケーススタディだった。

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