今から30年ほど前にパチンコ業界へ参入したホールは、なぜか刻印玉を使わなかった。そのスタイルは今でも変わらない。
刻印を入れなければ、それだけ玉の単価は安くなる。
でも、そんな理由で刻印玉を使わないのではない。
理由は刻印が入ると真球にならない、というのがその理由だった。
計数管理と釘には昔から徹底してこだわった。そのための研究室もあるほどで、垂直上3度、並行釘、風車、バラ釘まできれいに揃えた。
苦労してゲージを徹底的に揃えても、玉が真球でなければ、データが揃わない。それなら刻印は不要、とミクロの単位まで拘ったのである。
玉の真球に拘るということは、研磨にも拘った。
同ホールでは布ベルトを使っていた。玉を研磨する能力はペレットより布の方が優れていた。ただ、ネックはベルトのコストだった。
ベルトのクリーニング代が結構高くつくのだ。
玉が汚れているとトイに玉が詰まって補給止まりの原因にもなる。そこで、本部の指示は「汚れていなくても毎日交換」だった。
稼働の高い店は1日でもすぐに汚れるが、稼働の低い店だとそう汚れることもないが、稼働が低くて、そんなに汚れてなくても毎日交換だった。
同ホールのチェーンでは、島上の清掃も毎日の日課だった。
埃は上から下へと降りてくる。ホールで一番上といえば、島の天井。まず、ここに埃がたまるので、島の上を毎日掃除することはマニュアルで決まっていた。
真球と埃、汚れ対策の次は、島の傾斜角度にも目を向けた。1台ごとの傾斜角度がバラバラでは、せっかく、ゲージを揃えてもデータは揃わなくなるからだ。
一発機がある頃は、特にゲージには自信を持っていた。クルーンへ入らないと話にならないが、大抵のホールはクルーンに入る飛び込みを殺したものだが、クルーンによく入るように調整した。
クルーンの中でクルクル玉が回る時のハラハラドキドキ感をお客は楽しんだものだ。クルーンによく入れば、お客さんは必然的にその店の一発台で打つことになる。
この時のノウハウを始め、日ごろの釘も担当者は全員が共有していた。人事異動で店長が転勤して、新しい店で釘に悩むことはなかった。基本釘が決まっていて、前任の店長のクセというもの自体がないからだ。
そういう下地があるので、アビリットがくらげっちを発売した時は、大量導入した。
今でも拘りは忘れていない。
同社のテレビCMにそれがよく表れている。
顕微鏡を見ながら、社員が一心不乱で玉を磨いている。

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