あるホールの店長が嘆いていた。そのホールは15年ぶりに全面リニューアルオープンをした。設備や内装を考えれば適正な判断だったと言える。
パチンコは4円、スロットも20円で等価交換営業、完全等価の店として地域で熾烈な一番店争いをやっていた。
だが、1パチの隆盛やお客さまの4円離れと云う業界の趨勢の中、その店舗も稼働が次第に下がって行った。
一物一価の大号令のもと周辺の競合店舗もやむを得ず、右へ倣えのように「等価営業」にスライドしたことも影響した。
そのホールは全面リニューアルに際し、パチンコもスロットも全台各台計数機を導入。所謂、最新の設備導入と遊技機の増設でリニューアルに入った。
しかし、店長の思惑は見事に外れ、全面リニューアルの効果は薄く稼働も上がらず、投資効果は殆どなく借金だけが増えた。
そして上層部の指示で、再度、1円コーナーを増設してリニューアルを実施。結果、短期間に2度のリニューアルをやるはめになった。
それでも、なかなか集客の手ごたえがなく、稼働も目標通りには今一つ伸びきれない。店長は覚悟を決め、全身全霊で徹底して営業に専念しようとした。
さて、ここからが本題。
それまでの、本社の統制力を行使せず店舗責任者の力量を尊重し、現場に裁量の余地を多く持たせる運営方針に変化がでてきた。
本社の統括本部長、部・次長クラスが現場の運営に細かく口を挟み出した。加えて、果ては専務までも。
それまで、殆ど現場に足を運ぶことはなく、ネットを使った運営管理ソフトで現場を管理監督していた人たちが現場に登場。
それぞれが、それぞれの考える打開策を店長にアドバイスし出した。本人たちはアドバイスと言うが、店長からすれば細かな指示に近い。
事前に本部に提示していた「年間計画」も大きく崩れた上に、次々とアドバイスと云う指示の雨あられ。
加えて、本社のお偉いさんの登場に現場スタッフも戸惑いを隠せない。外野からの大声のおかげで、運命共同体の右腕の主任との仲もギクシャクしてきた。
自分でも、ついつい被害妄想的になり、果ては四面楚歌さえ感じてしまうしまつ。
「今回の失敗はお前だけに責任があるわけではない」と言ってくれる統括本部長の気持ちには感謝する。
「俺たちにも、当然、責任はある。指示を出して二度のリニューアルをさせたんだから・・」と言ってくれる部・次長クラスの言葉もありがたい。
只、現実問題として、機種構成の考え方、釘整備の仕方、利益の読み、稼働と利益のバランスなどの言説が各人それぞれ微妙に違う。
物事が旨くいっている時は放任主義、しかし、一度狂い出すと統制主義に変貌。本社の統制指導と言いつつ、所詮、個人レベルでの経験と考え方が頭をもたげてくる。
そこには、いやがおうにも、「船頭多くして船山に上る」現象が生まれて来てしまう。
また、得てしてそんな時は、カンとケイケンと云う名の老害でしかない場合も少なくない。
今は、老練な技術と智慧が必要な時期なのだろうが、中身の質を考えると、全ての人が適正なものを持っているわけではない。
「部下の手柄は上司のもの、上司の失敗は部下の責任」は『半沢直樹』の中での名セリフ。
店長は言い切る、「“上司の失敗は部下の責任”と言い切って、知らん顔していて貰う方がまだまし」と。
決して、傲岸不遜な態度とは思えないように感じる。そして、店長の気持ちが良く分かる気がする。

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