今から20数年前、業界に参入したばかりの業者が、ホールの新築祝いを持っていくことになった。
大きな取引をしてももらっているために、喜ばれるものを考えた結果、ホールに付ける高級壁掛け時計を選んだ。
大きな時計を抱えて、意気揚々とホールの事務所へ向かった。
きっと喜んでもらえると思ったが、ホールの反応は間逆だった。
「いらん。持って帰って」
「???」
吟味した時計が却下になり、呆然とした。
「帰る時間が気になるから、時計はホール内にはかけない」
その理由を聞いて納得。後日、従業員食堂用にテレビを贈った。
もう一つはホールが絶対にチョイスしない景品がある。
「昨年、ロッテからガンダムとコラボした商品が販売されました。ガンダムはパチンコのキャラクターとしても馴染みが深いので、これは絶対に売れると思いました。しかも什器も付いているので、ホールさんは取り扱ってくれると思っていましたが、見事に予想が外れました」(景品業者)
商品の特徴は味が50分も長続きすることだった。ライバル商品が30分だったことを考えると圧倒的な長さだ。
ホールが拒否したことで、パチンコファンの前に姿を見せることはなかった。
ここまで書けば何か分かっただろう。
答えはガムだ。
ガムを景品で扱っているホールの割合は、景品業者によると1割もない、という。
実際、ロッテ商事もある組合会議で「禁煙する人が増えてガムの需要がものすごく増えているんです」と売り込んだが、ホール関係者は無反応だった、という。
ホールがガムを嫌がる理由はただ一つ。
イタズラされることを嫌がってのものだ。ハンドルや床にガムを付けられたりすると掃除も大変だ。吸殻回収装置にでもガムを押し込められると故障の原因にもなる。
ガムは何らかのトラブルを作る原因になる。それなら最初からトラブルの元になるものは排除する、というのがホール側の発想である。
それが連綿と受け継がれているために、ホールにガムはない。
「うちはお客様からの要望があれば、できるだけ応えるようにしていますが、不思議とガムを置いて欲しいという声はありません。のど飴を舐めながら遊技しているお客様が多いです」(ホール景品担当者)
お年寄りが多いホールだと断然ガムより飴玉だろう。
景品で扱っていなくても、客はガムを噛んでいる。では、実際、どれげらいの被害があるのか?
「景品で扱っていなくても、お客さんは持ち込んでくるわけですが、うちでは、ガムでイタズラされることもありません。うちでもガムは扱っていませんが、昔からの雰囲気だけだと思います」(ホール代表者)
タバコより利益率もいいはずだ。
ここらで業界タブーを打破してみてはどうか。

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