「こんなに早く閉店のご案内をして大丈夫だろうか? 間もなく閉店してしまうパチンコ店に遊びに来ていただけるのか?」と不安の声も上がったが、オーナー決裁の通りに閉店の案内を告知した。
閉店日の告知、お客様の貯玉、貯メダルの賞品交換、累積来店ポイントの景品交換のご案内も周知徹底した。
閉店の案内文に「法遵守の範囲内にて、できる限り喜んでいただける営業をさせていただき”●●”(店名)の有終の美を飾りたいと考えております」と最後の想いを書き込んだ。
お客様から閉店を惜しむ声が多数上がった。
「本当に残念でならない」
「わしら、これからどこで遊んだらいいのだろう」
「寂しくなるわ」
「次、働くとこ決まったのか?」
「兄ちゃん、今までありがとうね」
「いつも頑張っていたな」
「今まで、おもしろかったわ」
「あなた、本当に…(泣)」
「もうパチンコ卒業するわ。他の店では打てないから」
数えきれないぐらいの常連様やお客様の声に頭を下げた。
直近2カ月の営業では稼働が下がっても大した策を打てずにいたが、閉店直前でも稼働を上げてみせる! 絶対にやってやる、との思いが心底からこみ上げてきた。
同じ頃、店長はスタッフを集めてミーティングを繰り返していた。
派遣スタッフの方々の生活を案じて、年内に新しい職場を見つけるように伝えた。
あと数人欠ければ正常な業務運営が出来なくなる状況に追い込まれるのだ。
その様な状況下でも店長は私に言った。
「どんな状況になっても絶対にお客様に迷惑を掛けないで最後まで頑張ります。何でもやります。早番1人でも店を開けます!」
店長に一寸の迷いもなかった。
数日後、派遣スタッフの1人が退店することを伝えにきた。
「この業界で頑張ります。本気で頑張ります…。最後の最後まで働きたかったです…」
両手で固い握手をしてお礼を言った。
派遣から直バイを経て、将来的に正社員への昇格のプランも考えていた大切なスタッフだった。
少ない要員しかいないので、シフト運営すら厳しくなっている状況だった。
「お客様に喜んでいただくために、これ以上何をしたらいいのか? 自分達に何が出来るのか?」
スタッフ全員に苛立ちが見えた。
この時点が閉店35日前のことだった。
つづく

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