お客にも店を選択する自由はあるのだから、そんな店へ行ってストレスを溜めなければ、そんな不満も出てこない、というもの。とはいえ、回らない、ベタピンの店が多すぎることも問題だ。
それは、さて置き、同じ出玉なら気持ちよく遊べるホールの方がいいに決まっている。そこを論じているのだが、伝わらない人には伝わらない。そういう場合は決まって「作り笑顔の接客はいらない。静かに打ちたいので用事のあるとき以外はほって置いて欲しい」。
それも分からないではない。会社から教えられたマニュアル通りのロボットのような接客には抵抗感がある。両手を前で組んで深く45度に腰を折ってお辞儀するのは、見ていて異様に感じる。
お客にとって必要なことは、押し付けの接遇ではない。「心からのおもてなし」の接遇である。
「時代が変わってもおもてなしの心は変わらない。自分の好きな人に何をしたら喜ばれるかを考え、行動する。おもてなしとは、相手のことを想い、心を込めて行動するからこそ、感謝や感動が生まれる。これが私たちの考えるおもてなしです」と話すのは遊都の都筑章史マネージャー。
おもてなしの心は会社の経営理念の中心にあり、スタッフの心の教育の中心となっている。
「同じ目的と同じ価値観を持って仕事することが何よりも重要。それを社員に分かりやすく伝えている」(同)
同社ではパチンコは何を売りにしているかを考えた。それは「楽しい時間と空間の提供」だった。
お客さんから「ありがとう。また来るよ」という言葉をいただくことを喜びとして、おもてなしを広めてきた。
同社には理念を行動に変える、行動規範、判断基準がある。それがクレドカードで、すべてはお客様の立場に立ち、自分中心の考えはそこにはない。
取り組みは3年前から始まり、社員の行動が180度変わった、という。
自分たちのファンを作るようになった。
そして、お客さんに喜んでいただいたことをメモに残し、それを会社全体で共有するようにしている。
特に優れた内容は社内新聞に書いて張り出している。さらに、その中から印象に残ったエピソードを総選挙で投票。上位3名のエピソードは、本人出演のムービーでエピソードを再現して残している。
エピソードとは日常の些細なことだが、お客には忘れられないことでもある。
年配の女性客が自転車で来店していた。帰ろうとしたら、タイヤの空気が抜けていた。困っているのを見て、空気入れを持って行った。空気を入れたがどうも抜ける。虫ゴムを見るとボロボロで、ここから空気が抜けていることが分かった。
とっさに社員が取った行動は、自分の自転車の虫ゴムをお客さんの自転車に付け替えた。
また、こんなこともあった。
カウンターにやってきたお客さんが「この近くにセブンイレブンはありませんか?」と尋ねた。
ホールからセブンイレブンまでは結構、距離があった。
カウンター係は気転を利かせた。これは、十六銀行を利用したいに違いない、と思った。十六銀行はコンビニで引き出しても手数料が無料だからだ。
それでカウンター係は「十六銀行をご利用ですか?」と尋ねると、「どうして分かったの?」と驚いた。
「以前、十六銀行で通帳を作った時に、セブンイレブンは手数料が無料になると聞いていたものですから」と答えた。
「すぐ近くにあるファミリーマートも今は無料になっています」
「じゃあ、そこを教えてください」
普通のカウンター係ならセブンイレブンを教えて終わっていた。一瞬のうちに客のニーズを読み取り、最善の情報を提供することが、おもてなし接客の真骨頂ともいえる。

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