これが40歳過ぎると再就職先の門はぐっと狭まる。
会社としては営業職に就いてもらうつもりだが、仕事を覚えるために現場仕事から始めている。
Aさんの前職はチェーン店が8店舗ほどの中小ホールの店長だった。ここで4年余り勤務していたが、大学を卒業して新卒で入社したのは大手ホールだった。
大手には10年以上在籍していたが、ここでの店長職経験はなかった。
食品加工会社の社長は面接の時に、なぜ、前職を辞めたのか聞いた。
「一番最初の会社は上に上がるためにはコツが必要でした。上に覚えのいいパフォーマンス、接客が必要でした。お客様のためというよりも上司に向けて忠誠心と愛想を振りまくような小芝居の打てる者は出世が早いのですが、不器用な奴はなかなか上には上がれませんでした。上司に自分の夢を手紙に書いて渡したり、盆、暮れには中元、歳暮も渡している人もいました」
いうまでもなく、Aさんは小芝居が打てるタイプではなく、不器用なタイプだった。小芝居が打てないので10年以上経っても店長にはなれなかった。
Aさんなりに一生懸命仕事はやってきたが、これ以上この会社で働く自信がなくなり、退社して自分の力を発揮できる中小ホールに転職した。
真面目な働き振りと、大手の経験を買われて2年後には店長職に就くことができた。
中小ホールではアルバイトの採用から機種選定まで店長が任されて、大手では味わえない経験も積むことができた。
オーナーは在日だった。
Aさんは日本人だった。
このホールには店長になって20年の人もいた。この店長も日本人だったがAさんにこう打ち明けた。
「うちは店長以上の役職に就こうと思えば、親族か在日でないと無理だよ。うちにいる限り日本人は店長止まりだよ」
大手では経験できなかった店長職を転職先では経験することができた。何よりも中小で学んだことは小回りの効く店長が多いことだった。
大手の店長は本部からの指示通りに釘を合わせるだけなので、釘の技術は中小の方が優れている、と感じた。
大手の強さは稼働が落ちると、すぐに改装に入り、新台を大量導入して、玉を出す、という手法だったが、これはノウハウでもなんでもないことを改めて感じた。中小には太刀打ちできない資金力が勝っていただけだった。
そうしたことや現在の職場の待遇を考えた場合、この先定年まで店長を続けていくことに魅力を感じなくなった。
これが、まったくの異業種へ転職した理由だ。
Aさんは年収が半分になってもそちらを選んだ。
パチンコ業界の給料は相対的にまだ高い部類に入る。給料以外に仕事に魅力を感じることがなければ、今後も人材の流出は避けられない。
魅力とはズバリ社会に必要とされる産業になることだ。余暇産業ともいわれるように、ギャンブル色を薄め、余暇を楽しんで明日の活力を生む産業にならなければいけない。

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