ということで、ホテル業界のことについて書いてみる。
一流ホテルに就職したAさんは、新規開業するホテルの準備室メンバーに選抜され、土地勘のまったくない町にやってきた。
ホテルは宿泊、宴会、料飲の3つの部門から成り立っているが、最も大きな収入源は宴会である。
新たに開業するに当たり、まず、やらなければならないのが宴会の営業だ。
それで、Aさんが最初にやったことは、ライバルとなる市内の各ホテルに日参して、宴会場の看板調査だった。どこの企業がどんなパーティーをやっているかが、分かれば、営業もかけやすい。
開業後は宴会セールスの支配人として陣頭指揮を3年ほど執った後、ブライダル部門へ移った。
1年は365日あるが、ブライダルに適した日にちは、年間わずか75日しかなかった。
まず、暑い真夏や梅雨の時期、寒い冬の時期は敬遠されるからだ。
気候のいい春と秋の土、日、祝日となれば、75日ぐらいしかない、ということだ。
ブライダルの売り上げを上げるために、Aさんはウィークデーのブライダルを売ることを考えた。
そこで、ターゲットとしたのが、日曜、祝日もなく働いている百貨店や不動産業界だった。
彼らは平日が休日なので、平日に結婚式を挙げれば会社の上司、同僚を心置きなく招くことができる。
この作戦はズバリ当たった。
料飲部長になった時には、肝を冷やす経験もした。
農機具メーカー主催のパーティーが開かれた。招待客は1500人の農家の人だった。
昼食にカレーを出した。
味が好評でお代わりをする人が続出した。ここでホテルの計算違いが出た。
そんなにお代わりするとは思っていなかったので、ライスが足りなくなったのだ。
ホテルとしては「ライスがなくなりました」とは口が裂けてもいえない。
ここで部長は判断を迫られた。
「よし、従業員用の米を使え」と厨房に指示を飛ばした。
お客用の米と従業員用の米では、もちろん、同じ米ではない。従業員用は安物の米を使っている。
しかし、米を作っている農家の人の舌を誤魔化すことはできない。この時腹を括った。
最後は総支配人と土下座するしかない、と。
不安は的中した。
「最初の米と違いますね。出せばいいというものではありません」とお叱りを受けることになる。
さすがに、従業員用を使ったともいえず、「吟味不足で申しわけございませんでした」と平身低頭で謝った。
「自分のホテルが一番だということを頭に植え付けて、営業していました。会社の不平、不満をいっていたらダメ。自分の会社とお客様を好きになること。それによって、お客様が我々を好きになってくれる」
パチンコ業界の場合、会社を好きになる前に、自分の仕事に胸が張れるようにしなければ、会社を好きになることもできない。
仕事に胸が張れるという事は、社会に役立っているかどうかということにつながる。

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