他店メダルの持込を防ぐことは、ホールでの需要は確実にある。他店メダル防止装置に社運を懸けた会社があった。
方法は画像処理技術だった。
スロット機のセレクター部分に小型カメラ付に識別機を取り付け、メダルの図柄で他店のものかを瞬時に判別して、他店コインは、そのまま下皿に出てくる仕組みだった。
試作品までは出来上がったが、最後汎用性を持たせるために小型化させるところで、足踏みをしていた。
この会社が次に取り組んだのが穴空きメダルだった。

既存のメダルにも簡単に穴あけ加工ができる。
これで他店メダルは一目瞭然となる。
こういう穴空きメダルの店では、他店メダルの持込にも抑止力が働くというもの。
画像処理のように1台当たりに莫大なコストもかからない。
関東のとあるホールでスロットの誤差玉が頻繁に起こるようになっていた。
調べてみると他店メダルが紛れ込んでいた。
ホールは警戒して怪しい人物に目星をつけるようにした。そして、ついに犯人らしい男を突き止めた。
1回目はあえて見逃した。
2回目に来て、またやったところで捕まえることにした。
すると、男はまたしてもやってきた。監視カメラでも男をロックオンした。
遂にポケットからメダルを取り出して、投入口に入れる決定的瞬間を捉えた。
男を事務所に連れて行った。
最初は名前も住所もはぐらかして、素直に白状しようとはしなかった。
そこで「警察に突き出す」というとようやく身分を明かしはじめた。
何とホールの社員だった。
同業者であれば、他店メダルの持込がどれほどの罪かは分かっているはずだったが、男は「メダルは中古を買った。周りの皆がやっていたので大丈夫だと思った」と動機を話し始めた。
男の勤め先のホールに連絡を入れると、社長と店長が車で1時間半かけて身柄を引き取りにきた。
相手は同業者。店長は警察に被害届けを出すべきか悩んだ。
丁度、社長は海外旅行中で不在だった。被害届けは社長と相談することにしたが、最低限のけじめとして、男を解雇することを望んだ。
その後、海外旅行から戻ってきた社長と相手のホールの社長が話し合いの場を持った。
男の供述もニュアンスが違ってきた。
最初はメダルは中古品を買った、といっていたが、潰れたホールに侵入して盗んだものだった。
1回の使用量は多くて3000円分。勝った時は、それを生活費に回していた。男の年齢は25歳で、子供が2人もいた。
犯罪者を出してしまった社長は男を直ちに解雇。刑事事件にはしない代わりに一筆書いて、今後は従業員管理を徹底することを誓った。
スロットもパチンコのようにエコスロになれば、メダルそのものが不要になるので、他店メダル持ち込みもなくなる。
しかし、それは何年先の話になるか分からない。

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