「何かあったんですか? お客様で2人目なんですけど」と店員は訝った。
そりゃ、そうだろう。
パチンコ店で領収書を要求するお客もいないし、領収書を発行すること自体が業界にはないので、社員も領収書対応の教育などは受けていない。
しかし、2人目ということは、恐らく日報の読者が実験したものと思われる。
業界関係者が都内のホールを8軒ほど回って、領収書対応について調べてみた。
結果的にスムーズに領収書を発行するホールは1軒もなかった。予想通りといえば予想通りだ。
「上司に聞きます」
「現場では分かりません」
「ちょっとお時間をいただくことになりますが…」
飛び込みで回ったが領収書を出すほうが宝くじに当たる確率のようなものだ。
気さくに話が聞ける店長のホールに向かった。
「10年このホールで働いていますが、領収書を求められたことは一度もありません。そもそも会社で決まりがない。会社の指示がないので、どうやって出していいか分からない。特殊な業界ですからね。普通の業界並みに見てもらえないのは、領収書も発行できないところにあるのかも知れませんね」
ホールの事務所にはもちろん領収書はある。
ただ、それは取引業者用に切るためのもので、お客用ではない。
「そもそもお客様がいくら使ったかが分からない。いずれにしても警察に聞かなければ領収書のことは分かりません」
領収書は税務署の管轄で、警察とは関係がないはずだが、警察に領収書のことを聞いても明確な答えが出るはずもないように思える。
元、大手商社マンのAさんは20年以上前、海外からのお客さんの接待にパチンコを使っていた。
「領収書を書いてくれ、といったら自己申告金額で簡単に領収書を書いてくれたよ。もっともそこはいつも海外からのお客さんを連れて行っていたなじみの店だったこともあるけど、簡単に書いてくれたな」と述懐する。
まだ、パッキー、パニーカードが全国共通の頃、1度だけ領収書を書いたことがある、という業界人も出てきた。
「ETCカードは全部履歴が出る。レシートも発行できる。これを応用すればパチンコ店でもユニットでレシートが発行できるようにするのは、技術的には可能なはず。ただ、それが接待用なのか自分の遊び用なのかの区別がつかないことが問題になる」
いわれてみれば、その通りだ。
そもそも領収書の件は接待用に経費で落としたいので、領収書を求められたわけで、領収書を乱発していたら脱税の幇助につながる可能性も出てくる。
外れ馬券が経費として認められた大阪地裁の判決を不服とした、大阪地検は控訴する方針だ。
ちなみに、問い合わせをしていた大手は、「お客様からの領収書発行の依頼があった場合は、必ず発行します。ただし、現場ではなく本社経理部からの発行となります」との回答が寄せられた。
対応するようになったんだと思って、本社の相談室に領収書の件で電話を入れてみた。すると「現場で聞いてください」。
チェーン店に電話して対応に出た店長は「領収書?うちではお出しできません」とキッパリ。
対応の周知徹底は一切図られていないことが分かった。

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