そう気づいて頭取りに行った時にも注意深く観察していたのだが、競合店へ行っている気配もない。
気になり始めると気になる。
1人、2人ならまだ分かるが、仲のいい6人が忽然と姿を消したことが腑に落ちない。
その6人を知っている常連客に聞いて、驚愕の事実を知らされることになる。
「6人でロト6を買っていたのだが、そのうちの1枚が2等に当たったんだわ。確か賞金は1000万円だった、と聞いている。それでこれを機会にパチンコからは足を洗ったらしいよ」
ロト6とはいまさら説明するまでもないが、01から43までの43個の数字の中から異なる6個を選択するものである。
申込数字が本数字6個全て一致したものが1等で当せん金は約1億円になる。で、2等は本数字5個と一致し、なおかつ残りの1個の申込数字がボーナス数字と一致したもので、当選金は約1500万円。
3等は本数字5個で、ボーナス数字が外れたもので約50万円、となる。
「賞金は6人で山分けして、1人150万円ほどになったらしい。それで、老後の蓄えの足しにするためにパチンコは止めたんだとさ」
普通なら、その150万円でもっとパチンコをすればいいようなものだが、これまでの元が少しでも戻ってきたので、止めるのがお年寄りの発想のようだ。
この話を聞いた店長は複雑な心境だった。
貯金を取り崩してパチンコをしているお年寄りも少なからずいる。そういう話を聞くと心が痛む。
お客さんは、「負けるからパチンコをする」という心理が働く場合がある。人間の心理は不思議なものでずっと勝ち続けられるものは、やがて興味を示さなくなる。
この心理を巧みについた手軽なレジャーがパチンコだった。
きのう負けた1万円を取り返すために、翌日またパチンコ店に足を運ぶ。昔の腕のいい店長は取ったり、取られたりの駆け引きが絶妙で、そんな店が繁盛したものだ。
それがいつの間にか、店は取りっぱなしで、客は負ける一方で。これではお客さんの資金も続くわけがない。
そんなことが理由の一つで、パチンコ人口が減り続けているのに、パチンコ業界はその打開策を打つ気配すら感じない。
絶妙な間で、取ったり、取られたりを繰り返してくれるホールなら、このロト6の2等が当たった6人もパチンコから足を洗うこともなかったはずだ。

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