10代でバーテンダーをやっていた時、マスターからこんなことを教えられた。
「医者、美容師などが特にそうだ」と前置きした後こう続けた。
「若かろうが、経験が浅かろうが、お客様の前では狼狽えるな。不安を与えるのが一番の罪。ハッタリが時には安心を産む」
他人の教えを「鵜呑み」にすることから脱却した今思うことがある。
お客様へ与えるべきモノはハッタリではなく「安心」と「納得」だと信じている。
地域一番店を堅守し続けるホールがある。
5km圏内には大型競合店が点在するが、ぶっちぎりの独走状態だ。
それについては、ユーザーは確かに「安心」を感じているのだろうと思う。
では「安心」の根拠は何なんだろうか、と考えてみた。
「安心」や「満足感」は、店舗責任者の独力で築けるものではない。部下や上司、同僚。さらには取引先など様々なところからの支持を受け、そして「組織」に認められて、ようやく実現できる。
満足の提供具合は「組織」すなわち「企業」の「仕組み」が反映されると言っても過言ではない。
このホールは連日満席。他のチェーン店も成績はまずまず。全国的にもトップクラスに位置する。
私の持論が正しいならば、その組織は非常に優れているということになるが…。
いざ、中に入って見ると外から見ているのとは大違いだった。
トップの第一印象は「旧態依然」。考え方はこんな具合だった。
「競合店のチラシ回数に負けるな!」
「広告費用の分、粗利は確保!」
「競合店の購入台数に負けるな!」
「新台購入費は、粗利で補填!」
「経費は削れ、人件費も!」
「馬車馬の意味を知っているか?」
一番唖然とさせられたのがこの一言だ。
「出せば客は来る」
お客様を馬鹿にしていると思った。
抜きに抜いて、出す。マッチポンプではないか。
何処に「安心」を感じられる「誠意」があるのだろう。
業界大手のイベントに日本中が踊らされている。
どこもかしこも7,7,7。
大手対策の「緊急会議」が開かれた。運良く立ち会うことが出来た。果敢に立ち向かおうとするのだが、驚きの連続だった。
「やはり7が良いのでは?」
「おこぼれに預かるには6か8ではないのか?」
「定説は25。時勢もあり、10などは?」
「独自路線で0や3は?」
会議を傍観していたが「独自路線」など望むべくもなかった。
いかに効率良く「集客」=「回収」出来るかを考えている。
営業の責任者達が雁首を並べてこのレベルだ。そこにはマーケティングリサーチも、数値的根拠もない。ついでに言えば、外部の提案を受ける気もない。
結果はやる前から見えていた。その催しはユーザーには「その他大勢」にカテゴライズされる羽目になる。
しかし、実施するには費用がかかる。捻出元は言うまでもない。軌道修正するまでお金を使い続ける。
「ウォンツ」を捏造し、お為ごかしの「ニーズ」で縛る。
さながらキャッチセールスか贋作の押し売りのようなもの。
ユーザーに気づかなければいいのだが。
その「盲信」がパチンコ企業を「盲目」にさせる。その代償は、ユーザーの懐から支払われる。
ユーザーは「そんなモノは望んでいない」伝えるべきである。
その「沈黙」がさらに彼らを「増長」させる。悪しき螺旋は断ち切らねばならない。
このホール企業には以前、「辣腕」と呼ばれる最高執行者がいた。グループ店のほとんど全てが好立地で好条件なのは、彼の働きによるものだった。
今でも「パチンコ店は立地だ」といわれているが、悲しいかなその通りだ。
彼が退陣した現在も高稼働を保てているのは、その際のアドバンテージがあるからだ。
自分達の功績だ、自分達の手腕だと、勘違いしている組織が成す昭和の「仕組み」。それを「盲信」して支持するユーザー。
装置産業からサービス産業、付加価値産業への過渡期で、支持を受ける「新風」が皮肉なことに「旧態依然」の体質であった。
「原点回帰」にしては笑えない冗談。
今後も命題は、ユーザーの意識改革を促すことである。
了
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