新台入れ替え時の新台効果がある2週間の間に、機械代の半分は回収してしまえ、という風潮が業界に蔓延した頃から、業界の歯車が狂い始めた。
機械代の回収を早める、ということは当然釘が閉まる。メーカーからは次々と新台が発売され、機械代の回収も終わっていないのに、メーカーの戦略に踊らされて、次々と新台を入れる。そんな悪循環を繰り返していたら、オーナーが店長に出す指示は粗利がどうしても優先されてしまう。
「粗利も取り、稼働も上げろ」
全く相反することをいわれても、イベントでしか稼働が上げられなかった店長はお手上げ状態だ。
関東圏にある500台クラスのホールを任せられていた店長が、まさにこの状態だった。ホールは等価交換営業だけに粗利を取り過ぎるとすぐに客が飛ぶパターンだった。会社の指示は粗利18~20%営業だった。
店長は「こんなに粗利を取って稼働を上げろということが土台無理」と心の中で叫んでいた。
店長は転職する覚悟を決めた。このまま会社の指示通りの粗利で、稼働を上げられずに会社を辞めても癪なので、自分の花道を作るためにも、粗利を無視して稼働を上げることに専念した。
出入りのメーカーの営業マンから「大手の繁盛店は粗利9%でやっていますよ」という話を聞いたことがきっかけでもあった。
店長は8~9%の粗利で走った。するとみるみる稼働が上がり始めた。最初は粗利が取れていないことに対して怒られたが、「たまたま吹いてしまいました」と古典的な言い訳で逃げた。
競合店もみるみる稼働が上がって行っていることに注目し始めた。何か変なことしているのか偵察もしたが特段変わったことはやっていなかった。
稼働を上げるためにテクニックを使ったわけではないのだから、分かるはずもない。ただ、粗利を落としただけである。
粗利が先か稼働が先かと聞かれたら、パチンコは間違いなく稼働が先だ。
辞めるつもりだった店長は現在もホールに残っている。稼働を上げることで利益も伴ってきたので、オーナーも無理難題をいわなくなったためだ。
パチンコは出し過ぎても追っかけてこないし、出さな過ぎても追っかけてこない。この中間に追っかけてくる割数が存在する。
40交換時代、会社の指示割数は全台13.5~13.6割の店舗があった。店長は初代アレジンの割数を12.5~12.7割で運営した。会社の指示違反だが、アレジンはこの割数が一番追っかけてくる割数だと気づいたためだ。
会社は粗利を取り過ぎている、と店長に注意したが、その分、フィーバーパワフルコーナーへ還元した。すると、客が客を呼ぶように全体の稼働が上がって行ったケースもある。チェーン店で稼働率が11番目のホールが、4カ月後には、トップに立ってしまった。
やはり、等価では粗利幅が極めて狭いために、難しい営業であったことが、客離れにも反映されている。

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