
会期を3日残してでのバタバタ感は否めないが、安倍首相がシンガポールのカジノを視察したのは5月30日。骨太の成長戦略にカジノが盛り込まれることになったのは、6月16日。そして、18日の審議入りは、安倍首相の強い意志が伺える。
今国会での成立を見送り、衆議院で継続審議とする方針で、年内の成立を目論んでいる。
IR法案を推進する上で、手本となっているのが安倍首相も視察に行ったシンガポールだ。
シンガポールではIRが開設される以前の2009年の海外からの観光客は年間970万人だったのに対して、2013年は6割増しの1550万人に達している。
シンガポールの特徴として、IRがビジネス客向きの「マリーナ・ベイ・サンズ」とファミリー向けの「リゾート・ワールド・セントーサ」があること。2003年にシンガポールで行われた国際会議は世界で25位だったが、IR後の2011年からはトップを堅持している。これに伴って観光収入は9割増しとなっている。
国際観光立国を目指し、現在日本を訪れる海外からの観光客1000万人を政府が目標とする2000万人、3000万人に押し上げるためにも、IRは原動力となり、成長戦略の第三の矢として期待できる、というのが法案提出者の言い分である。
メリットがあればデメリットもある。
反対派から必ず出てくるのが依存症の問題だ。
これに対してもシンガポールのように自国民に対しては入場料(日本円で8000円)の徴収や自己排除、家族排除システムの導入によって、抑止する方針が示された。
みんなの党の大熊議員の質問の中で、パチンコという言葉が出てきた。
曰く、「カジノ施設の中にパチンコを設置する場合と従来のパチンコ店の2つのケースが考えられるが、その場合、パチンコも規制の対象になるのか?」との質問だった。
これに対して、柿沢議員は「パチンコは風適法下のもとで営業されており、賭博ではなく遊技と位置づけられている。一方のIRはカジノに止まらず、エンターテインメント、ショッピング、宿泊、と面的な広がりがある。よって、IR推進の一環のカジノは、遊技としてのパチンコとはまったく別のもの。カジノにパチンコを設置しても、この法律においてパチンコ店の営業が規制の対象になるものではない」と明言した。
しかし、カジノの中にパチンコ台とは唐突な感じがする。水面下ではパチンコが日本のカジノでは設置されることが織り込み済みのようにも受け止められる。
カジノ解禁には反対の立場を取る共産党の赤嶺議員は、依存症問題を重視した。
この時に引き合いに出されたのがパチンコの依存症で、パチンコ店の駐車場で子供を車内放置したことによる死亡事故だった。
ちなみに、警察庁調べでは平成18年以降での死亡事故は7件、ホールが駐車場の見回りで車内放置を発見したのは247件であることが報告された。
これを受けて赤嶺議員は「毎年30件あまりあることは、パチンコ依存症の深刻さを物語っている」と指摘した。
いずれにしても、今回は推進法の審議で具体的中身については実施法で議論される。
パチンコは風営法下の遊技と定義づけられている以上、カジノが解禁されたら遊技に徹底することが求められそうだ。

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