ホールがあるからメーカーが成り立っていたわけで、そういう意味では昔のメーカーはホールに随分助けられてきた。
まさに、当時は「買っていただく」状態だったのに、その立場が逆転するターニングポイントになったのは99年に発売された海物語あたりからだろう。
機械寿命もそこそこ長く、ホールには何よりも利益を運んでくれる機械となったものだから、ホール間の機械の争奪戦が始まる。
担当の営業マンを接待攻勢で、1台でも自店への割り当て台数を増やしてもらおうとしたことが発端となって、いつしかメーカーが「売ってやる」状態に変わってしまった。
海物語を巡っては、刑事事件にこそなっていないが、割り当て台数で軟禁された営業マンもいたほどだ。
メーカーも上得意のホールを訴えることもできず、ホールの要求を呑んだ。
そこまでして機械を導入したのは、機種一つで売り上げが大幅に違ってきたからで、強烈な個性を持つオーナーは力ずくで奪い取った。
業界が右肩下がりになると、ホールの口から出てくるのは、メーカーに対する不満ばかりになった。
「ホールの利益も上がり、もちろん、メーカーの利益も上がった。お互いに、持ちつ、持たれつの関係だったのに、ホールがメーカーに対して『ありがとう』という気持ちがなくなったので、ホールをコントロールする今の販売方法(機歴)になった」と打ち明けるのはメーカー関係者。
ホールとメーカーの人間関係が崩れてしまったことが、メーカー優位の現象を生んだともいえるようだ。
抱き合わせ販売以前は、メーカーの営業マンとホールの人間関係が良好だった。ホールが買いたくもない機械を売るときは、「次は絶対何とかしますから」との営業マンの借りを受け入れて、ヒット機種が出たときに貸しを補填してもらう人間関係があった。
そういう人間関係が構築されていれば、強引な抱合せ販売に至ることもなかった。
「メーカーだって外れる機械を作りたくて、作っているわけではない。昔の店長はダメな機械でもどうやったら自店の客に喜ばれるか、独自に創意工夫して使っていたが、今は、そういう努力する姿勢が感じられない。ホールの運営能力も落ちている。開店プロを排除できないホールが出玉で勝負できるわけがない」(同)とメーカーにも言い分はある。
メーカーも図体が大きくなったので、次から次へと機械を販売していかなければならない宿命にあるわけだが「機歴販売を止めたら開発費が出ない」との本音も覗く。
ここはホールとメーカーが歩み寄ることが必要であることは明らかだが、まずは、五分の対等な立場にならなければならない。

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