この厳しい時期でもあり5店舗のうち1店舗は、閉店予備軍だった。ただ、立地条件がいいために、やり方次第では復活する可能性はある。そこで、オーナーが外部から有能な店長を引っ張ってきて、再建を託した。
閉店予備軍だけあって従業員のやる気のなさは、学園ドラマの中でもよく描かれる掃きだめのようなレベルだった。
新任店長は、まず、当たり前のことを当たり前にすることから着手した。行き届いていなかった店舗清掃を手始めに、45分と決められていた休憩時間を「暇だから」と勝手な理由をつけて60分に。エスカレートすると90分に延長したり、とやりたい放題だった。そんなことを改めることから始めなければいけなかった。
前任の店長がそれを許していたわけだから、従業員にすれば「面倒くさい店長」となる。
店長の指示に対しては「はい、はい」と聞くレベル。つまり、聞いたふりをするだけで指示されたことはまったくやらない。
そんな現場の状況をオーナーにリアルな姿で伝えるために、店長はウエラブルカメラでやり取りなどを録画した。
動画を見てオーナーは唖然とした。
人事の5段評価で言えばEランクの従業員ばかりだったことが改めて分かった。そりゃ、そうだろう。閉店予備軍のホールなわけだから優秀な従業員は配置しない。
ある日、店長は従業員の休憩室に「面従腹背」という四文字熟語を貼り出した。A4のコピー用紙に1字ずつプリントアウトして貼った。従業員の目には、否が応でも入ってくる。
意味は「うわべだけ上の者に従うふりをしているが、内心では従わない」ということだ。
まさに、今いる従業員のことを指している。
なぜ、貼り出したかというと、普通なら、知らない言葉があれば、調べるはずだ。案の定というか、調べる気配もなく、就業員の行動が変ることはなかった。学園ドラマなら、ここで店長の気持ちを理解したリーダー格の従業員が立ち上がり、「やってらろうじゃないか」と周りを鼓舞して、店の立て直しに協力するのだが、そんなことが起こるはずもなかった。
それがコロナ前のこと。
最近、そのホールが従業員とセットで売却することができたらしい。売却するホールは別会社にしていたようだ。稼働はよくなかったが、立地のポテンシャルがあることが、従業員とセットでの買収の決め手となったようだ。
第三者の目から見ても厄介払いができたように見えてしまう。買収した側のルールで今後は運営されていくが、その社風が合わなければ自然にいなくなるものだ。

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