パチンコで栄華を極めたが複数店舗あったホールも今や1店舗を残すのみ。ホールが儲かっていた時に、親せきに出資して焼肉屋を始めた。16人も入れば満席のこじんまりとした店だが、焼肉の命とも言えるタレの研究を重ね、営業歴30年になる店は地元の人に愛され続けている。
低貸しで細々と営業しているホールは、総台数250台。平日の延べ人数は30人。これが土日で50人ほどだ。家賃がかからないから営業を続けてはいるものの、オーナーは廃業の覚悟を決めている。
いずれ、スマート機になるが、中古が入るようになってもユニットも必要だが、その工事代すらも捻出できないような状態だ。
これまで続けてこられたのは、5000~6000円という格安の中古機の入れ替えで凌いでいたが、そんな安い機械も入らなくなっている。
現在は早番、遅番の2人の従業員がいるが、ワンオペで回している。
オーナーが廃業を決めた一番大きな理由は現在の客層だった。現役生活をリタイヤした高齢者ばかり。この人たちだけではじり貧になることは目に見えている。
後10年も経てばみんないなくなる。そんな将来性のないホール営業を今後も続ける選択肢はなかった。
今になって親戚にやらせている焼肉屋についてしみじみと語る。
「やはり息が長いのは飲食店だ。味が良ければお客さんは黙っていても来てくれる。それにホールのように大きな設備投資も必要ない。今はウサギとカメが逆転した状態だ」(オーナー)と苦笑いする。
ホールの売り上げには到底敵うはずもなかった焼肉屋だったが、今では確実に利益は焼肉屋の方が上になっている。
この焼肉屋の人気の秘密は、味以外にも“便利と安心”を提供していた。北関東の田舎にあるので、来店客はクルマで来店するケースが多い。そこで、2種免許を取って代行運転をサービスでやっている。これなら帰りのクルマのことを気にせずに、美味しい焼肉と酒を楽しむことができるというわけだ。
で、オーナーは廃業したホールを焼肉屋にすることを考え、飲食店のコンサルタントに相談した。
その答えは「否」だった。
大箱の焼肉屋を始めても立地的に満杯になることもなく、スカスカになるので、暇そうな店に見えてしまう、というのがその理由だ。人口の少ない田舎では身の丈にあった商売をやれ、ということだ。むしろ、よほど秘境にでもあった方が、わざわざ来てくれるケースもある。中途半端が一番ダメなパターンでもある。
こうして、使い道がなくなる田舎の郊外ホールは全国各地に散在する。

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