就職活動をする中で、マルハンも受けて、内定をもらうが、他に就職先があるだろうと考え、辞退する。世の中の就職戦線は甘くなかった。
北海道には希望する就職先もなく、親には内緒で東京へ出ることにする。
何も考えずに最初に受かったところに就職する。
就職が決まったことを親に報告すると不承不承認めた。
それが現在勤めている東京のホールだ。
店舗数は12店舗と大手どころではない。
GWを利用して新入社員の両親とおじいちゃん、おばあちゃんが東京見物を兼ねて北海道から出てきた。息子の成長を見届けることが目的だった。
もちろん、息子には内緒で。
息子の姿を一刻も早く見たいので、開店早々に足を運ぶ。ところが、遅番だったのか、ホールに息子の姿はなかった。その間、他ホールを視察して時間を潰す。
お父さんは地元でパチンコをすることはあるが、東京のホールの接客レベルの高さにビックリする。
夕方、再び息子が働いているホールへ戻る。
そこには、テキパキと接客する逞しく成長した息子の姿があった。家では見せたこともない笑顔でお客さんとも会話している。
東京のきれいなホールと素晴らしい接客を見ていると、パチンコのイメージが少しずつ変わっていった。
両親は息子の働き振りを見て、一安心した。
そして、事務所に店長を訪ねた。
何より驚いたのは店長だ。社員の親御さんがホールを訪ねてきた経験がないからだ。
北海道土産の白い恋人を手土産に父親がおもむろに口を開いた。
「息子が大学を出て東京のパチンコ店で働いていることは、小さな田舎なの今でも内緒にしているんですが、息子の働き振りを見て私の考えが間違っていたことが分かりました。ちゃんと接客業を叩き込まれている。私の田舎のパチンコ屋とは大違いで、イメージが変わりました」
母親はわずかな期間で成長した息子の姿を見て安心したのか、目に涙を溜めながら「過保護かと思われるかもしれませんが、これからも息子のことをよろしく頼みます」と店長の手を握って懇願した。
そして、意外な質問をしてきた。
「送金問題はどうなんでしょうか?」
パチンコ業界の負のイメージだ。
店長が「うちのオーナーは韓国なのでそれは心配ありません」と答えるとさらに安心した模様だった。
閉店後、店長はその新入社員を呼んだ。
「大手には大手のいいところがあるように、中小には中小のいいところがある。大手ではなかなか店長にもなれないが、中小ならそのチャンスは十分ある。後は自分のやる気だけ」と励ました。
GWの期間中、東京に滞在している親御さんのために、5月1日と2日はシフトを変えて「親孝行でもして来い」と送り出した。
全国チェーンが各地に出店することで、その地域のホールの接客が底上げされていけば、田舎でのホールイメージも変わっていくことを店長は実感した。

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