プロモーションビデオでは朝礼の風景が流された。改革の手始めとして朝礼から着手したためだ。
それまでの朝礼は業務の引継ぎがメインで、皆、下を向いてどんよりとした重い空気が流れていた。引継ぎ内容も記憶に残らないスタッフもいた。そんな朝礼風景を他店へ研修に行った一人のスタッフの一言が変えた。
「うちの朝礼とは全然違います。皆、滅茶苦茶明るかった」
こうして、アリーナの朝礼プロジェクトがスタートした。

「今は朝礼が楽しい。何だか元気が出ます。大きな声を出す、たったこれだけのことでうまく仕事のスイッチをオンにすることに成功しています。この朝礼になって皆が前を向いて笑顔が増えました」
朝礼の次に改革したのが早番、遅番の見直しだった。この2班構成では伝達事項がうまく伝わらないこともあった。
そこで新たに作ったのが小班体制。早番を3班、遅番を3班にそれぞれ細分化し、各主任、副主任をリーダーにして、誰が誰を教育するか、担当を明確にした。その結果、仲間意識が強化された。
これに併せて頑張っているスタッフを評価するために、ベストチーム賞、笑顔ベストスタッフ賞などの表彰制度を設けた。
小班体制は新人スタッフには特に好評だ。
「入社したての私は、分からないことを誰に聞けばいいのか、聞くことにも遠慮がちでそのままにしていることもありました。でも、小班体制になって私の一つの班に入って仕事をするようになりました。以前は分からなかったことも、今では何でも教えてもらっています。小班体制になってとても成長できました。これから入ってくる新しいスタッフは心細くて不安だらけだと思いますが、今度は私から教えていける社員になりたいです」
朝礼の改革と班の見直しで予想以上に元気と笑顔に溢れる店舗になった、という。
しかし、元気と笑顔だけでは何か物足らなさを感じていた。それは何かと考えた結果、「気づかい」だった。
新たな挑戦として始めたのが受身の接客から「攻めの接客」だった。
スタッフの方からお客に積極的に声をかけられるように発案された取り組みが「アタック部長」の任命だった。
アタック部長に任命されると勤務時間内に20回以上お客に声をかけなければいけない。

お客の行動を見ながら、お客がして欲しいことを先読みして行動することをモットーとしている。
アタック部長を始めてからは、お客からの「ありがとう」の声が増えた、という。
今ではアタック部長に任命されない日でも、ホールのあちこちから「アタックはいりま~す」の声が聞こえてくる。「ありがとう」という言葉が自然とそんな行動にさせる。
この「ありがとう」の一言は社員の気持ちを大きく変えることになる。
「ボクは接客の仕事が大の苦手でした。笑顔を作ったり、お客様と話をするのも苦痛でした。当時のボクは未熟で接客の素人でした。
そんなある日、年配のお客様が景品のお米を重たそうに運んでいたので、車まで運びました。正直、業務の一環で、雨も降っていたので面倒くさいという気持ちでした。店へ戻ろうとした時、その年配のお客様が孫ぐらいの私に向かって深々と頭を下げ、『重いのにわざわざ、ありがとうね』と満面の笑顔でいわれました。このとき笑顔の大切さ、すばらしさを教えてもらいました。仕事の遣り甲斐や接客の大切さを実感できました。
接客の仕事が苦手で、自信が持てなかったあの頃のボクと同じようにパチンコ屋で働いている方々に、情熱リーグを通じて接客の楽しさを発信できたらいい。
今、胸を張っていえます。
ボクの仕事はパチンコ屋だ、と。そして、接客が大好きです」
社会人としての成長のアリーナで経験した女性スタッフもいる。彼女は入社4年。
「4年前は定職にも就かず、仕事を転々として、世間に反発するだけの子供でした。入社しても問題を抱えていました。自分への問題は注意されても素直に聞き入れず、反抗的な態度を取っていました。接客面でもお客様とトラブルになることが多々ありました。それで何度も何度も辞めようと思っていました。
私が頑張れてこれたのは、皆の一生懸命働く姿や私の話を真剣に聞き、真剣に応えてくたアリーナの仲間のお陰です。
皆の協力のお陰で笑顔ベストスタッフに選ばれたり、『大人になったね』と誉められるようになりました。ここまで支えて、成長させてくれたアリーナの仲間にとても感謝しています。
私たちスタッフがいるからお客様が来てくれる。そんなお店にしていきたい」
星川店長の〆のことばが冴えていた。
「テーマである笑顔、元気、気づかいに取り組んだ結果ですが、このような舞台に立っていることが信じられません。ただ、私たちはこの壇上で発表することが本番ではありません。本番は間違いなくホールであってお客様と向き合っている時です。人は高い目標を持つことで成長できます。人に刺激を受けることでより行動できます。
一番伝えたいことは、取り組みのことようりも取り組みを形にすることができた副店長や役職者、取り組みをもっといいものにしよう、と協力してくれたアリーナのスタッフ1人1人が素晴らしく、最高だということです。アリーナのスタッフを誇りに思います」
「アタック入りま~す」という声が、遠く福島から今でも聞こえてきそうだ。
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