定年退職後、Aさんは手始めに夫婦で世界一周の旅に出かける計画を立てた。彼は来年4月出発のピースボートのクルージングに申し込もうとした。3カ月間かけて世界をゆったり回るこの旅の料金は、最も安いクラスで一人180万円ほどだった。
Aさんは、このために積み立ててきた預金が1200万円あったので、2人で申し込んでも余裕があると考えていた。
しかし、世界クルーズの話を奥さんに持ちかけると、その表情は見る見る青ざめていった。何故なら、積み立てた預金通帳の残高がゼロになっていたからだ。
実は、Aさん夫婦は若い頃からデートでパチンコに興じるほどパチンコ好きであった。結婚してからも共働きであったが、奥さんは8年前に仕事を辞めてから、時間があるとパチンコを打つようになっていた。
負けが続くと、奥さんは預金に手をつけ始めた。
昔は、互いにパチンコに行ったことが服に染みついたタバコの匂いでわかった。しかし、2020年4月からパチンコ店でも全面禁煙が導入されたため、タバコの匂いが服につかなくなり、Aさんは奥さんがホールに通っていることに気づかなかった。
そして、定年後に夫婦で世界クルージングに行く夢は、目の前で打ち砕かれた。その瞬間、Aさんの怒りは爆発した。
「お前とは離婚だ!」と叫んだが、奥さんはパチンコで負けを取り戻そうとする典型的なギャンブル依存症の罠に嵌っていたのだ。
Aさんは、離婚後に年金の半分を奥さんに持っていかれることを避けたいと考えた。
この悲劇を回避するためには、ギャンブル依存症にならないような解決策が必要である。まず、夫婦間でオープンなコミュニケーションを取り、定期的に家計の状況を確認し合うことが重要だ。
お互いの支出を把握し、問題があれば早期に対処することができる。また、ギャンブルを娯楽の一環として楽しむのは構わないが、限度を設定し、予算を超えた時点で一旦立ち止まり、他の楽しみを見つける努力も必要である。
さらに、ギャンブル依存症が疑われる場合は、専門のカウンセリングや治療を受けることも必要だった。早期の対応が、人生を大きく狂わせる前に解決への道筋を示してくれたのに。
Aさんのようなケースを教訓にし、定年後の生活設計を慎重に考え、ギャンブルに依存しない健康的な老後を目指すことが大切である。

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