そんな中、ある花屋は売り上げを回復させるために妙案を思いついた。
「未開の店舗へ営業をかけようじゃないか!」というのだ。どうせ営業をかけるなら、儲かっている業種が狙い目だ。そこで彼らが目を付けたのが、なんとパチンコホールであった。確かに、世間は未だにパチンコ屋は儲かっていると思い込んでいるようだ。
ともかく、花屋はパチンコホールに営業をかけた。
「1週間ぐらい持つ花をアレンジしますので、生花をトイレなどにいかがですか? 予算に合わせます」というセールストークである。
パチンコホールのトイレに花を飾るとは、斬新と言えば斬新である。確かに、トイレでフレッシュな花の香りが漂う光景は、悪くないかもしれない。
ところが、パチンコホール側もそう簡単には飛びつかない。1週間1万円は高いが、3000円ぐらいならいいかな、と考えたが、それが稼働につながるかどうかを考えると迷った。
「いやいや、アホか! 」と内心で花屋は反論したくなる。「花を飾ったぐらいで集客効果が上がるわけがないじゃないか。なんでもかんでも費用対効果なんか考えるな!」とつい声を荒げたくなる気持ちを抑えた。だが、ここで諦めてはいけない。
花を飾るということは、そのホールの心を映すものなのである。
花屋はこう続けた。
「お客さんが店内に入ったとき、ふと目に入る美しい花。これがホールの印象を決定づけるんです。その瞬間、お客さんは心地よさを感じて財布の紐が緩むんですよ!」と言い切った。確かに、花一輪でパチンコホールが一気に明るくなるなら、それは悪くない投資かもしれない。
そして、花を置くことによって「このホールは細かいところまで気を遣っている」と評価されること間違いなしだ。いや、もしかしたら、花をきっかけにお客が次々とリピーターになり、売り上げが劇的に伸びるかもしれない…夢物語に終わる可能性も高いが、そこは花屋の心意気である。
さて、パチンコホールの店長たちはこの提案をどう受け止めるだろうか? 商売にはリスクがつきものである。時には、花一輪がそのリスクを和らげるかもしれない。そんな期待を胸に、花屋は今日も新たな取引先を求めて街を駆け巡るのであった。

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