パチンコ日報

ニュースにならないニュースの宝庫 

第3話 漂流者 ⑤

黒い魅力

真っ赤な『7』が三つ揃い、その下のアタッカーが開く。僕の口もそのアタッカー同様にあんぐりと開いたままだった。お客さんもそのほとんどが驚き、一瞬ではあるが静寂が広がる。フィーバーの効果音だけが淡々と鳴り響く。

奴は開いたアタッカーのVゾーンではない箇所にひとつだけ玉を入れ、わざとパンク(大当たりの強制終了)させる。そして再びアタッカーが開かないのを確認すると、今度はスタートチャッカーに玉を入れる。

リールは7の三つ揃いからバラバラの何でもない図柄に変わる。これで通常の状態に戻った。上皿に出てきた少量の玉を取り除くと今度は機械そのものを開け、島の中に放り込む。一連の動きには一切の無駄がない。その様を呆然と見ていた僕の耳元で奴は

「今のがリーチ目だ」

と僕の耳元で囁くとあとは何事もなかったかのように口笛を吹きながらその場から立ち去った。耳には煙草の匂いとじわりと湿った嫌な感触が残る。くすぶりの匂いはまだそこに奴の唇があるような錯覚を呼んだ。心臓が波打つ。得体の知れない高揚感。抑えきれない感情で僕は奴の後ろ姿を目で追いかけた。気がつけば実際に必死で奴に向かい、走っていた。

「主任、今のは一体どうなってるんですか。どうやったんですか」

「知りたいか。知りたかったら明日の朝早く出てこいよ」

彼は背を向けたまま顔だけを少しこちらに向け低いがしかしはっきりと聞こえる声で答えた。

ホールの喧騒をよそに僕は一人この場に取り残されたような錯覚にとらわれる。この瞬間、僕の全ての価値観が変わった。『奴』への呼び名はもう『奴』ではなく『西田主任』に変わる。ここから立ち去る時の悠然とした後ろ姿。哀愁を漂わせる口笛。

あの気味悪いイボですら、なにかハードボイルドの象徴のように思えてきた。主任は男を匂わせる。それは男を魅了する匂いだ。今まで僕は男にこれほど魅せられたことがない。健康な魅力には特段関心をもたない。怖くはあるのだが『不良』への魅力はその恐怖に打ち勝つ。そう、『不良』は男の美学だ。そしてその強さは僕を虜にする。主任は無口で何事も伜なくこなし、物事に躊躇しない。ぼくは「かっこいいな」と呟いた。
 
一瞬にして骨抜きにされたのが自分でもよくわかった。節操がないくらいの豹変を遂げた僕は、その夜なかなか寝付くことができない。まんじりともせず、万年床にあぐらをかき三本目のショートホープに手をつける。と、隣の部屋から咳払いがひとつ聞こえてきた。

主任だ。まだ起きている。わけもなく主任の部屋を訪ねてみようかと考えだした。心臓が急に忙しく動き出す。ショートホープをスパスパと吸いだすと、とたんに口の中に苦味が広がる。しかめ面をしながら僕はショートホープを赤いラークのロゴが書いてある灰皿に乱暴に押し付けた。

だめだ、明日の朝まで待ちきれない。

「部屋に行くべきか行かざるべきか、ここが男の思案橋」
一人で部屋にこもる時間が増えるとこのように意味不明な独り言が増える。そしてさっき消したばかりだというのに新しいショートホープに手をつけようとしたときに二度目の咳払いが聞こえてきた。

「主任が呼んでいる。これは俺に来いと言っている」
勝手な解釈は僕を大胆にさせた。廊下にでると空気は思いのほかひんやりしていた。相変わらず廊下の蛍光灯はチカチカと点滅を繰り返している。意を決したせいか今日は不気味さを感じない。
 
隣の部屋のドアを神妙に見つめる。ごくりとつばを飲み込み大きく深呼吸をする。「よし」と覚悟を決め軽くノックをしてみる。が、緊張のせいで力の調整がうまくできず、大きな音が鳴った。僕はビビる。しかし返事がない。中でごそごそする音が聞こえる。

さらに心臓が激しさを増して波打つのがわかる。やはりこの時間の訪問はまずかったか。一瞬の後悔。扉はいきなり開いた。「ひっ」と声が出てしまった。自分の情けない声のせいで恥ずかしさのあまりに顔が赤くなる。

「坂井くん、いらっしゃい」

主任は僕の赤くなった顔をじっと見ると笑顔を浮かべた。が、その目は笑ってはいない。たじろぎまくる僕は返事ができない。するとさらに彼の口角が上がり、無言のまま部屋に入るようにと僕においでおいでをした。

つづく



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カジノでスランプグラフ?

以下の記事は3年前に書いたものに加筆した。

東京・多摩地区の稼働低下が著しい、という。同地区は東京の西側で調布市や八王子市、立川市などがある。

「4パチ、20スロの稼働が加速度的に減っています。地方で起きている問題が多摩地区で起きている。由々しき問題です」と声を落とすのは同地区のホール関係者。

地域では一番店と言われていたホールは、平日4割、土日は8割稼働を誇っていた4円の海のコースがスカスカになっている。

稼働低下に加速度がついている4パチ、20スロに現場がやることははっきりしている。

「回すしかなことは分かっています。会社からも回すように指示が出ていますが、現場を預かる店長としては予算達成もしなければなりません。回しながら予算を達成するのは、今の稼働状況では二の足を踏んでしまいます」(多摩地区ホール店長)

今はまだ1円の稼働があるのでお尻に火が付いた状態ではないようにも見える。

「このまま進めば、将来的にはパチンコよりスロットの割合が逆転して、パチンコ屋からスロット屋に替っているかも知れませんね」(同)

パチンコ屋からスロット屋になるかどうかは、6号機にかかっている。6号機になったらスロットから足を洗う、というファンが多い中、スロ専がどんどん閉店に追い込まれている。

「スロットの等価交換にも限界が近づいています。6枚交換にしてでも設定を入れないとお客さんはついてきません。今となってはスランプグラフが仇になっています。スランプグラフは爆発しない機種であることを宣伝しているようなものですから」(同)

スランプグラフといえば、日本のカジノにはスランプグラフを設置するように水面下で動いている、という噂話もある。カジノのスロットマシンにスランプグラフが付くとすれば世界初となる。

「カジノにスランプグラフを付けられたらホールはたまったもんじゃないですよ。激しい波はカジノ用でないと作れません。スロット好きはこぞってカジノへ行くようになりはしないか、と心配です」(同)


パチンコ業界では射幸心をそそる設備機器が数多く開発されてきた歴史がある。古くはパトランプで大当たりすると頭上のパトランプがくるくる回った。それが何台も回っていれば、射幸心も掻き立てられる、というもの。メダルの紙巻一発払い出しは、床は紙屑だらけで鉄火場演出となった。

スランプグラフも機械の波を読むために開発されたものだが、激しい波のカジノマシンでは射幸心を大いにそそられる?



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日本で唯一の合法カジノへ行った人たちの体験記

日本で合法的にできる唯一のカジノはどこにあるか? いきなり、なぞなぞのような質問を受けた。咄嗟に答えは出ず。「公海上のクルーズ船?」というぐらいしか答えられなかった。

答えは沖縄の米軍基地内にあるタイヨーゴルフクラブ内にあるカジノだった。沖縄へ取材に行った人が、現地の人に夕食がてらに誘われて向かった先がここだった。

ラスベガスのような華やかさはない。部屋にビデオスロットが50~60台並べてあるという感じだった。

ゲーム方法は100ドルのプリペイドカードを先に買う。カードの保証金として1ドル取られるので額面は99ドル。カードを返却した時に1ドルが返ってくる。

カジノへは5人で行った。

5人共1ドルスロットを打った。5人合わせて20万円ほど負けた。1人頭3~4万円ほど負けたようだ。

「ベットして回すだけ。それで終わり。ちっとも面白くない。こんなスロットでは日本人には全然なじまない。日本のスロットの方が純粋に面白い。日本にカジノができても行かない」と全員大ブーイングの嵐だった。

日本のスロットの仕様でカジノ向けを作った方が「絶対に日本人には受けるし、外国人も嵌ると思う」と付け加える。

後で、現地の人に聞いたら、「あそこは出ないよ」ということだった。そりゃ、そうだろう。ラスベガスやマカオのようにカジノ同士の競争がない。1社独占となれば、ペイ率も低く抑えられているんだろう。

そんな中で賑わっていたのが20セントのビデオスロットのコーナーだった。そこは日本人のお年寄りが占拠していた。日本の5スロよりも遊べて、出るときは出るのが魅力らしい。


写真はカジノトラベラー総統のブログより


ちなみに、ゴルフ場やカジノ、レストランなどの付帯施設は、すべて日本の思いやり予算で作られているので、ゴルフ場は安いが、カジノは渋い、というのが現状のようだ。

そもそもカジノは観光客相手になる。観光客は観光気分で、カジノで負けてもいいという気持ちでおカネを落としてくれる。

今回、日本で出来る唯一の合法カジノ誘われて行った人たちも、沖縄の観光気分で行ったまでで、「リピーターになることはない」と断言する。

日本で最初の開業を目指す大阪IR株式会社は、こうした意見をどの程度参考にするかで、成功の成否が変わってくる。



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大当たりして玉切れした客の対処方法は?

総台数400台クラスのホールで今から4年ほど前の出来事だ。

日中は50人ほどしかお客はいない。どこの町でもよくある光景である。

1割ちょっとの稼働ということは1列ガラガラということが想像できる。そんな人のいない島から叫び声が聞こえてきた。

声の主は常連客ではなかった。

4円の地獄少女にかれこれ3万円近く突っ込んでいた。最後の千円札を入れたところ、残り玉もほとんどないところで大当たりを引き当ててしまった。

アタッカーに入れなければならないのに、玉がない! 追い銭するカネもない! 島にはその客1人しかいないので、隣の人に玉を借りることもできない。

床に落ちている玉を探したが、稼働のない島に玉も落ちていない。

客のいる島へ駆け込み、事情を話し半ば強引に一握りの玉を借りることができた。事なきを得て1万8000発だすことができた。何とか負けも取り戻すことができた。

お客の緊急事態を見ていたのはアルバイトスタッフ3名。正社員は用事で外出していたため、アルバイト君たちはどうしていいものか、とただオロオロするばかりだった。

当然ホールにそういう時の対応マニュアルがあるわけでもない。

報告を受けた店長も、こういう場合助けていいのか、悪いのか判断がつかなかった。昔なら台を開けて玉をちょっと上皿に入れてあげることもやっていた。ちょっとしたことでも、最近は客が所轄に駆け込むので、店長も過敏になっていた。

困った店長は所轄にこのケースでの相談をした。答えは当然のようにNO。こういうことは聞くだけ野暮。

店の方から玉を緊急事態で貸すことはできないとなれば、ホール側ができることは、スタッフが代わりに客の声掛けして玉を借りてあげる、という結論に達した。

今回のケースは1割稼働が生んで悲喜劇。びっちり客がついている店なら、隣の客にでも貸してもらえるのに、それができなかった。

玉を出さないから客も来ない。玉を出さないというよりも出せないというのが正しい。出せば軍団に持っていかれるだけなので、ホールによってはグランドオープンでホールのルールで軍団、プロを徹底排除しているケースもある。

射幸性ばかりを追求した結果の徒花でもある。いくらホールが満杯になろうとも、ホールにとっての本来の客ではない。




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言うは易し

本来私はパチンコ店を経営したことがないのですが、その難しさをある程度は見聞きしながら知ってはいます。しかしながら知ると解るは天と地ほどの開きがあり、やはりパチンコ店を経営しない限りその苦悩をわかることはないでしょう。

しかしこの業界がこれからも存続するためには経営者の苦悩を脇に置いて考えなければならないことも事実です。何故ここまで業界が衰退してしまったのか。様々な理由はあるとは思いますが、その最たるものは自浄能力の低さにあると思うのです。これはとても難しいことで、例えば貧しい生活に身を置いてきた者が何らかの理由で大金を手に入れたとします。

それまでは生きる為に物を食べ、生きる為に金を稼いできました。そこには不純なものはなくただ豊かな営みを送りたいと言うシンプルな願望しかなかったはずです。

しかし本人の努力の甲斐あって豊かな生活を送ることができるほどの経済力を身につけると衣食住にきらびやかさを求める様になるのです。贅沢が悪いとは言いませんが、それは成功の後の失敗を呼び込む予兆となりやすいのです。

そもそもが、結構なご身分で世の中の理を知り尽くしている経営者であるならば、失敗に至るプロセスを熟知しているので豊かになるほど身の回りを質素にされることでしょう。

例えば創業何十年も経つ和菓子屋さんは大金を儲けたとしてもその生活は質素であり、日本の食文化の中に身を置き、変わらぬ物を提供し続けて来られたと聞きます。そして驚くことに変わらない物を提供し続けると言うことは、まず自らを匡し(ただし)家の中の批判的な声に耳を傾け、世の中を絶えず見聞してきたとある本を読んで深く感銘を受けました。

パチンコはある時期国民からの人気を博し、支持されました。つまり成功したのです。

これは私の経験上の理論なのですが、成功の次は必ず失敗が来るのです。前段の貧しい生活に身を置いてきたものとは私のことです。世の中の理を知らない私は儲けた金の使い方を知らず、衣食住のレベルを上げ小さな成功に満足していたら今の様に会社の規模が小さくなり現在に至るのです。

つまり分際を逸脱してしまったのです。経営規模の大小の差はあるものの、その点に関してパチンコ店も身の程を弁え、娯楽産業としての分際を知っていたならばここまでの悲惨な状況にはならなかったのではないのかと思う次第です。

国民から人気を博し、支持されたのはきらびやかな店舗設備や、大仰な建物のスケールがあったからでしょうか。私は違うと思うのです。古くても、小さくても「娯楽とは何か」「何故人は娯楽を求めるのか」に着目し自らを匡し会社の内外の意見を積極的に取り入れ、更に研鑽を積むことを是とするならば、業界はまだ生きる可能性があると考えます。



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