当初は国内に2~3カ所を選定するようだが、最有力候補地として目されているのが大阪・夢洲だ。大阪オリンピックの誘致に失敗した広大な埋め立て地が余っていることに加え、人気のUSJにも近い。大阪、京都を始めとする関西圏の観光地が揃っていることから外国人観光客の集客が見込める。夢洲誘致には大阪府、大阪市、財界も一致団結している。
何より、大阪・夢洲は周辺エリアの観光資源が豊富なため、外資のカジノ運営会社も大阪は太鼓判を押している。それは採算が見込めるからだ。
大阪府は、IRカジノ開発に伴う経済効果が計1兆3300億円、開業後はカジノやホテルの運営や飲食などで年6300億円の効果が得られると試算している。もう、やる気満々だ。
場所に関して夢洲は当確だろう。次は民間業者はどこが選ばれるかということが関心事になる。日本で数年前から採用活動を行っているのがシンガポールでカジノ運営するマリーナベイ・サンズだ。同社では人事・監査・飲食・フロントオフィス・広報などの部門で日本人が働いているが、3年前には40人の日本人スタッフを新たに採用している。
マリーナベイ・サンズに滞在する外国人客で一番多いのは日本人で全体の23%を占める。この時は言葉の壁で戸惑わないように日本人スタッフをを積極的に採用していた。
しかし、IR法案が可決してからは、日本進出に向けての日本人採用を活発化させている。ことしに入って大阪でディーラー候補生の採用試験を実施している。条件は英語が話せること。シンガポールで実地研修を積んで、日本で開業した時には日本人ディーラーを送り込む計画だ。
同社のホームページでは「サンズグループでは今後も積極的に採用を行い、統合型リゾートで働く経験と知識を持つ人材の育成を進めていきます」と日本進出にやる気満々だ。
観光立国——外国人集客にIRカジノは欠かせないと推進派は声高に叫ぶが、どうも現実は違うようだ。アメリカのシティグループが発表した日本のカジノ市場のレポートによると、1兆5000億円の市場規模のうち、外国人客からの収入は約33億ドル(約3300億円)に過ぎず、残りの8割近くは日本人客という想定となっている。VIP客だったカジノ好きの中国共産党幹部は望めなくなっている。
日本人客が8割と想定すれば、日本人ディーラーが多ければ多い方がいい、ということになる。
ベトナムのカジノは自国民のカジノを禁止していたが、外国人客だけでは赤字になり、3月から自国民も条件付けで入れるように方向転換している。中国人VIPが来ないとカジノ経営は儲からないものになっている。
自国民が8割を占めなければカジノ経営は厳しいとなれば、日本人ディーラーを養成するのは自然な流れだ。
ただ、日本人客でカジノの収益を上げなければいけないとなれば、そもそものIRカジノ構想は間違っていたことになる。

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