ベラジオ本社は元従業員を懲戒解雇処分にするとともに、刑事告訴も検討していることをホームページ上で明らかにしているように、今回の事件はしっかり取材する必要は当初から感じていた。
ベラジオが取材に応じてくれる体制が整うまで待つことにしたために、今回の事件には触れなかった。
ネットで事件が明るみになってから12日目の2月14日、取材に応じてくれたのは吉田拓明社長だ。事件の流れを時系列で包み隠さず話してもらったが、ネットでは触れられていない事実がいくつかあった。
元従業員による打ち子を勧誘するLINEのやり取りがネットで一斉に拡散し始めたのが2月3日。この騒ぎは6日にYahooのトップニュースでも報じられたことから全国的に知れ渡ることになる。この間ベラジオ本社や店舗には連日苦情の電話が鳴りやまず、「ベラジオではもう打たない」とばかりに横堤店は、数日間で数百万円分の貯玉が引き出された、という。
ネットで大騒ぎになる直前、LINEのやり取りを流出させた当事者と思われる人から、1月28日深夜、ベラジオ本社に一通の匿名メールが寄せられている。内容は「横堤店の店長が設定漏えいの協力者を探している。本人の写真も持っている」とにわかには信じられないものだった。
翌日「証拠の写真をいただきたい」と返信メールを送ったが音沙汰はないままに、2月1日には別の人からTwitterでLINEのやり取りが流れているとの情報を受けている。2日には本人に出勤停止命令を出すと共に事情聴取すると「LINEのアカウントを乗っ取られた」と否認する。監視カメラの過去映像を確認すると、1月27日、28日の2日間にわたって故障台を元従業員が開放するとすぐにその台に座る打ち子と思われる人物の姿も確認できた。
3日からネットで拡散が始まり、4日にはホームページ上で横堤店の件を謝罪する文章を掲載した。
さらに8日には事件の概要と元従業員の懲戒解雇処分、刑事告訴の検討を発表していたが、13日には鶴見署へ「背任行為」で被害届を提出した。
今回の事件に対して、ベラジオの吉田拓明社長はこう話す。
「一つは管理の甘さ。もう一つは心のロイヤリティーが足らなかった。本当に自分の会社だと思えばそんなことはやっていなかったと思います。1人の従業員がやったことが社会的信用を落とし、会社の存続の危機を感じました。ただでさえ、パチンコ業界のイメージが良くないところへさらに悪いイメージを与えてしまいました。管理と教育の甘さで社会的ニュースになったことは、大変申し訳なく思っています」
今後の防止策としては店長の自主性に任せていた設定の打ち替え時間帯を固定した他、セキュリティー会社にも監査で入ってもらうようにした。
設定漏えい事件の場合、スロット台に設定6だった、という設定機歴が残っていないため、本人が認めなければ起訴するのは難しいとされている。ということはスロット本体に設定履歴が残る機能を付ければ、設定6が入っていた証拠が残るので、起訴に持ち込めることになる。
昔から続く設定漏えいを業界から根絶するためにも、この機能を業界を挙げて警察庁に陳情しなければならない。
これまで従来のパチスロの遊技機規則では、設定を打ち替えた場合、過去のデータをすべてクリアしなければならなかつた。従って設定履歴も残すことはできなかった。しかし、今回パチスロはベースメーターの搭載が決まっている。これは過去のデータから役物比率を表示する機能で、従来の規則では認められなかったものでもある。
その例に倣えば、設定履歴表示も設定漏えいなどの内部不正対策である。防犯上の機能で、遊技機の性能に一切影響を及ぼすものではない。真の健全娯楽を提供するためにも設定履歴表示の搭載は急務だ。業界を挙げて警察庁に陳情すべきであろう。今回の事件を教訓に、長年の懸案だった設定漏えいを根絶しなければならない。

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