入口の角台に70歳ぐらいのおじいさんが座っていた。その隣に20代前半の若者が座った。その店には分煙ボードを設置していたが、おじいさんは分煙ボードを使わずにタバコに火を点けた。
座った場所が入口の近くだったこともあり、タバコの煙がどんどん若者の方へと流れ込んできた。そこで、若者はたまらずに、分煙ボードを力一杯引き出した。
「痛いじゃないか!」とおじいさんが言い出した。
若者は「?」という反応だった。
最初は意味が分からなかったが、分煙ボードがおじいさんの体に当たったようだ。
「お前、俺に対する嫌味か。思いっきり引きやがって」
「タバコを吸うなら分煙ボードを引くのがマナーだろう」と若者が反論したために、喧嘩になった。
従業員が仲裁に入ってその場は収まったが、従業員はトラブルの原因をこう話す。
「分煙ボードの長さが短すぎるんですよね。台の奥に入っているので、長さをこれ以上長くできないのかも知れませんが、場所によっては分煙ボードが全く役に立たない場合もあります」
分煙ボードの使い方も、タバコを吸う方がボードを引くのがマナーだが、そんなマナーも心得ていない客が多いので、今回の様に吸わない方が引くとトラブルになったりすることが少なくない。日本人の心理としても吸わない方がボードを引くのは少し勇気がいる行為でもある。
こんなトラブルも屋内が全面禁煙になれば解消される。厚生労働省は東京オリンピックに向け受動喫煙防止対策の規制を強化し、罰則付きのいわば「屋内全面禁煙法」の施行を目指している。
飲食店やパチンコホールは、全面禁煙によって客離れが起きて、最終的には廃業に追い込まれることを懸念するが、資金に余裕のあるホールは喫煙室を設けて対処するしかない。
禁煙になって困るのはホールの従業員もそうだ。業界人の喫煙率は結構高い。全面禁煙になった時に、クローズアップされるのがアイコスに代表される電子タバコだ。
特徴は火を使わない、灰が出ない、臭いが少ない、というもの。煙に見えるのは水蒸気のようなものですぐに消える。原理はヒーターでタバコの葉に熱を加え、香りだけを引き出して、タバコの風味を楽しむ。
アイコス本体のスターターキットが1万円近くする。アイコス専用タバコは一箱が460円。パチンコの新たな景品市場にも成り得る。
アイコスなら禁煙場所でも吸ってもいいかどうかは、まだ発売されて1年ちょっとなので、自治体によって意見が分かれている。禁煙場所でも吸えることが全面的に認められれば、パチンコ店での喫煙問題の一助にもなる。
「電子タバコの本体が1000円以下で販売されたら、端玉景品で相当出る」(都内ホール関係者)というように廉価版が発売されたら、業界から火が付きそうだ。
電子タバコなら一番最初の問題も起らない。いずれにしても分煙ボードは消えゆく運命にあるのか?

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