業績はさほど落ち込んではいないものの停滞気味だった。新しい発想が社員から生まれて来ないことにオーナーは、やや苛立ちを感じていた。
そこでオーナーが取った行動は、社員全員に会社負担でスマホを持たせることだった。その考えに至ったのは社員の8割が未だにガラケーを使っていたためだ。
これから物事はスマホ1台で解決する時代。スマホを使いこなせないようでは、柔軟で新しい発想も生まれない、とオーナーは考えたのであった。
会社負担でスマホを支給するということは、きっと社員も喜ぶだろう、と思ったが、社員の反応は意外な結果だった。
約半数が「必要でもないモノを持たされるのは、いらない」と反対する声が挙がった。中には「強制ですか?」とオーナーをがっかりさせる者もいた。
反対理由は「使いこなせない」という声が多かったように、普段はスマホを必要としない生活を送っていることが推察できる。社員の年齢層も高そうだ。
改めて、オーナーは思った。
「これだから新しい発想が生まれない。広告宣伝もチラシやDMからスマホのアプリに移行しているのに、取り残されてしまう」と危機感を募らせた。
スマホを支給するにあたって、社員に必要かどうかの事前アンケートを取った。この時に社員がどれぐらいパチンコを打っているかも併せてアンケートを取った。
その結果、パチンコ・スロットを習慣的に打っているのは4割。まったく打たないが6割だった。
打っている社員でも1パチ、5スロで、4円、20円を打つ社員は皆無だった。
このアンケート結果にオーナーは驚きを隠せなかった。
スマホに興味もなければ、自分の仕事であるパチンコにも興味を示さない社員が6割もいた。興味がないことに新しい発想やアイデアなど浮かぶはずもない。
そのための突破口がスマホだった。スマホに興味や好奇心を示すだけでも、これまでと違った行動を行うようになる。スマホは情報の宝庫で、そこから自分なりに取捨選択して、それを営業にフィードバックして欲しい、と願った。
幸い、全員が全員スマホ支給に反対したわけではなく、新しいスマホが持てることに喜んだ社員もいた。好きこそものの上手なりで、まずは、何事にも好奇心を持つことだ。その前に、社員はもっとパチンコを好きにならなければいけないが、社員ですらパチンコができない現状を改めることから始めなければいけない。

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