住民は交野市の条例で定めた小学校から150メートル以内の出店禁止区域に店があり、さらに大阪府の条例で定めた約100メートルの距離に店舗の一部である景品交換所があることを主張。
これに対して公安委員会は「景品交換所はホールとは関係のない第三者の古物商で、100メートル以内にはパチンコ店はない」と反論していた。
景品交換所はホールの営業所部分とみなすかどうかが争点となっていたが、一審は住民側の訴えを認め、大阪府公安委員会に対して「取り消し」を命じた。
公安委員会の面子にも関わる問題なので、すぐに控訴したが、大阪高裁判決は大どんでん返しで、住民の訴えそのものを棄却した。
この棄却理由がすごい。訴えていた住民ら5人に対して「原告適格がない」という理由で訴えを退けてしまったのだ。早い話が、パチンコ店の営業許可取り消しを求める権利が住民側にはないというのだ。
しかし、訴えていた住民5人のうち4人はパチンコ店から100メートル範囲に住んでいるため、原告適格が認められ、星田小学校に通う児童の保護者で権利を有している、としていたのだが…
原告適格が認められるのは、「距離制限対象施設の設置者に限られる」とした。ということは学校ということになり、教育委員会でなければならない、ということだ。
「施設利用者に対して原告適格を認めるという判断方法は、風営法の保護する利益に関する解釈を誤っている」
原告適格とは普段聞きなれない言葉だが、意味はこうだ。
一定の権利関係について、原告として訴訟を適法に追行し判決を受けることのできる資格。特に行政事件訴訟で問題となる。
判決のカギとなったのが風営法だった。
「風営法は騒音や振動を規制して、近隣住民の静穏な生活環境を享受する権利を個別、具体的な利益として保護している。100メートルの範囲に居住する近隣住民の権利、利益を保護しているものと解すべきである。騒音及び振動に関する具体的な違法についての主張を一切行っておらず、100メートル以内に存することを違法事由として主張するに過ぎない」
風営法の下に営業許可の取り消しを求めるなら、近隣住民なのだから騒音や振動問題で訴えろ、ということだ。
「かかる主張は自己の法律上の利益に関係のない違法事由に関する主張として、行訴法10条1項による制限を受ける」
原告適格が認められる者であっても、法的利益が侵害されていなければ、訴えは認められない、ということだ。
「距離制限対象施設の利用者は距離制限違反を根拠として、営業許可処分の取り消しを求める原告適格を有しながら、被控訴人らについては、星田小学校の児童の保護者であることを理由に原告適格を認めることはできない」
〆の言葉は業界的には勇気づけられる。
「被控訴人らが主張する不利益は設置、運営によって直ちに周辺住民の生命、身体の安全や健康が脅かされたり、財産に著しい被害が生じるところまでも想定しがたいところである」
建築中のホールが、住民の反対運動で梃子摺っているケースもあるが、震災以降の業界の一部の対応が、パチンコ業界イメージをことさら悪くして、パチンコ潰しのデモへと発展した。
業界イメージを刷新しないことには、出店反対運動がなくなることはない。
そのためには、遵法精神を愚直なまでにやり抜くことしかない。

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